« 美術館の学芸員になりかけた話 | トップページ | 「運慶」と目が合う »

2017年10月15日 (日)

『最低。』の女性たち

11月25日公開の瀬々敬久監督『最低。』を見た。この監督はどうしても『ヘヴンズ ストーリー』の圧倒的な印象が強く、その後のメジャーな作品にはどこか物足りなさを感じてしまう。今回は現役AV女優の原作の映画化と聞いて、そのマーナ―な雰囲気に惹かれて試写を見た。

本作は、3人の女性を描く。境遇も年も違うが、共通点はいずれもAVとの関わりがあること。最初に絵を描く若い女性とその筆のタッチが写る。高校生のあやこ(山田愛奈)は友人と馴染めず、絵を描くことに生きがいを見出している。ある時、自分のだらしない母がかつてAV女優をしていたことを知る。

冒頭に夫との気づまりな会話が出てくる34歳の美穂(森口綾乃)は、ある時思い立ってAVの撮影に参加する。AVの撮影場面が最初に出てくる綾乃(佐々木心音)は、AVを自分の職業と考えているが、それを知った母と妹が北海道からやってくる。

3人の日常の細部を交互に見せるプロローグが10分はあるが、彼らが誰なのかさっぱりわからない。その後も何の説明もないが、息苦しい場面の積み重ねからだんだんとそれぞれの境遇が浮かび上がってくる。そこから、女性にとって生きにくい現代日本の姿が見えてくる。

必死で生きる彼女たちの息遣いが伝わるほどに、女性たちの存在感がすごい。それに比べたら、美穂の夫を始めとして男たちは薄っぺらだ。現代日本をAVを切り口に見ると、こんなにドロドロした深層が見えてくるとは。社会にあらがう女性の肉体を終始感じているような映画だった。

それにしても今年の後半は「最低」と言われそうな若い女性の日常を描いた映画が多い。もうすぐ公開の白石和彌監督『彼女がその名を知らない鳥たち』がそうだし、この映画と同じ日に封切られる大森立嗣監督の『光』もかなり似ている。

この映画は、もうすぐ始まる東京国際映画祭のコンペで上映される。少なくとも邦画については、この映画祭が尖がった表現を求めていることの証拠だろう。

|

« 美術館の学芸員になりかけた話 | トップページ | 「運慶」と目が合う »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/65814636

この記事へのトラックバック一覧です: 『最低。』の女性たち:

« 美術館の学芸員になりかけた話 | トップページ | 「運慶」と目が合う »