悪魔祓いの映画を見る
11月公開のイタリア映画『悪魔祓い、聖なる儀式』を見た。去年のベネチア国際映画祭で話題になってオリゾンティ部門の最優秀作品賞を取ったドキュメンタリーだが、見ていなかった。シチリアの悪魔祓いというだけで、妙に気になっていた。
冒頭に神父が頭をなでてお祈りを始めると、「ウー」と獣のようなうなり声を挙げる中年女性が出てくる。一瞬、神父が悪魔かと思ったくらい。
シチリアのカタルド神父は、教会に来る問題を抱えた人々に悪魔祓いをする。頭に手をかざして「悪魔よ出て行け」と祈り、聖水をかける。そうすると、信者は目が白目になったり、言葉にならない唸りを発したり。
毎週火曜日の悪魔祓いの日の教会には遠くからもやってくる人も多く、大賑わい。「遠くから来た人を優先します」と言うと、大騒ぎに。悪魔祓いは通常は個別にやっているが、大人数を相手に一度にやることもある。そうすると、あちこちでヘンな声と動作が始まるから、ちょっと怖い。
3人が何度か出てくる。オシャレをした中年女性(たぶんアンナ)は、普通に仕事をしている女性に見えるが、時々来ないと頭が痛くなるという。アチコチにピアスやタトゥーをした青年エンリコは、普段は友人と麻薬を吸ったりしているが、神父の前に来ると静かになる。
たぶん10代後半のジュリアは、悪魔祓いが始まると急に白目を見せて、床に這いつくばって吠え出す。数週間後に「もう治った」と言って現れた彼女の顔は、別人のようにスッキリした美人だった。
ナレーションも字幕もないので、場所も時間もわからない。この映画の間にどれだけの時間が流れたのか。ただ伝わってくるのは、悪魔祓いを求める人々が大勢いて、神父が極めてまじめにそれに応じている様子だ。ところが見ていると、この神父と信者が共犯関係のようにも見えてくる。
最後にローマで悪魔祓いの世界大会が開かれるあたりで、ようやく普通の世界に戻る。そこにはカタルド神父の姿も見えるが、アメリカやアジアの神父もいて、真剣に議論をしている。そこに最近の悪魔祓いを求める人々の急増を示す「ルモンド」紙の引用がクレジットで入る。
たぶんシチリアという歴史も自然も濃厚な土地が、こうした悪魔祓いの定着を生んだのだと思う。ミラノやトリノではないだろう。それでもこの異常な世界の連続が、見終わると現代社会の一つの風景にも見えてくるのはこの映画の力だろう。監督はフェデリカ・ディ・ジャコモという女性で、この映画には「悪魔祓いの現実とは違う」という批判も寄せられているようだが、現実としてこの映画の世界があるのは間違いない。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『ディスクロージャー・デイ』のおもしろさと不可解さ(2026.10.07)
- 『ナギダイアリー』の新境地(2026.10.01)
- 『ビルマの竪琴』から『花と兵隊』へ(2026.09.27)
- 1年ぶりの海外で考えたこと:その(5)飛行機の映画(2026.10.03)


コメント