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2017年10月 3日 (火)

「ボストン美術館の至宝」展にあぜん

10月9日まで開催の「ボストン美術館の至宝」展を見て、あぜんとした。私はここで「〇〇美術館展」についてはさんざん批判してきたし、朝日新聞のWEBRONZAにも書いた。しかし今回のボストン展はそういうレベルの話ではない。

昔は、「ルーブル美術館展」とか「ニューヨーク近代美術館展」などのいわゆる「名品展」をよくやった。ところが結局本当の目玉は改修工事でもしていない限り出品されないことが多い。だからこういう「〇〇美術館展」は、テーマを決めることが多い。「大英博物館所蔵エジプト文明展」とか「ルーヴル美術館所蔵ギリシャ展」とか。

ところが今回のボストン展のテーマは「至宝」。キャッチに「米国屈指の美術館 決定版。」とか「東西の名品、珠玉のコレクション」とか書かれている。ところが見てみると、「至宝」や「珠玉」はいくらなんでも看板に偽りありに見えてくる。

もともとあの広くなった3フロアーの東京都美術館に、わずか80点。それで「古代エジプト」「中国」「日本」「フランス」「アメリカ」「版画・写真」「現代」と7つもセクションを作るから、それぞれは10点前後。すでに日本ではエジプトのミイラ展は何度もやっているので、ミイラの装飾品を少し見せられても「はあ」という感じ。

一番つまらないのは現代だろう。小さなウォーホルのシルクスクリーンの「ジャッキー」に、どこにでもあるようなホックニーの絵、東京都写真美術館で見たことのあるサム・テイラー=ジョンソンの凡庸な映像に、村上隆の駄作。このセクションはいらなかった。

「版画・写真」もエドワード・ホッパーのエッチング数点にアンセル・アダムスの写真数点で、既視感がある。「アメリカ美術」は19世紀の肖像画や風景画は大味だし、小さなオキーフを2点見ても心は動かない。「フランス絵画」は確かにゴッホの「ルーラン夫人」「ルーラン」はまず日本には来ない名品だと思うが、あとはミレーとかモネとか国内にもあるレベルではないか。

個人的には、中国の南宋時代、13世紀の陳容という画家の《九龍図巻》が一番おもしろかった。戦う龍のダイナミックな姿をいくつも描いたもので、日本の画家たちは雪舟も等伯も大観に至るまで、みんな真似したんだろうなと想像する。いくら真似しても、日本の画家にはできない強さ、しつこさがある。

そのほかは、曽我蕭白だろうか。《風仙図屏風》は龍を退治する男を描いているが、風景は斜めになっていて劇画調。司馬江漢の《秋景芦雁図》は、日本画が西洋美術を吸収しつつある感じが何ともいい。

というわけで、実はそれなりに楽しんだ。全体を見ると、それぞれの作品群を寄贈したコレクター別になっていることがわかった。各コレクターの写真や解説もあった。しかし日本人にとってはただのアメリカの富豪にしか見えないから、コレクターを見せるというコンセプトは成功しているとは思えない。たぶんこの程度で日本の観客は満足すると思ったのではないか。

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