« トップが変わってもあまり変わらない東京国際映画祭:その(2) | トップページ | トップが変わってもあまり変わらない東京国際映画祭:その(3) »

2017年10月30日 (月)

『リュミエール!』をめぐって

先週末に公開された『LUMIERE! リュミエール!』について語りたい。これは19世紀末から20世紀初頭に撮られたリュミエール社の作品108本を集めたものだが、私は生まれて初めて「字幕監修」と「日本語吹き替え版監修」をして、パンフにも原稿を書いた。

そのうえ、公開前日にはこの映画の監督でカンヌ国際映画祭総代表のティエリー・フレモー氏と黒沢清監督によるマスタークラス「現代映画としてのリュミエール」の司会までした。そんなに関わったのは、1995年の映画百年の時にリュミエール映画関連のイベントをやっていたから。

リュミエール社の作品は1500本近くあるが、95年にはそのうち日本で撮られた全32本にプラスして、日本を撮ったカメラマン、ガブリエル・ヴェールがメキシコやインドシナで撮影したもの、リュミエール社の代表的な映画など108本を選んで、日本向けに35ミリプリントを焼いてもらった。

それを全国各地でピアニスト付きで上映した。このプリントは今は福岡市総合図書館に保存されている。さらに日本に来た2人のカメラマンと彼らの映像をテーマにした展覧会『映画伝来』を、渋谷区立松濤美術館、兵庫県立近代美術館、福岡県美術館で開催した。

出版物も3冊。108本の詳細な情報を入れた日仏併記のカタログ『光の生誕 リュミエール!』は朝日新聞社から出し、『映画伝来』のカタログは岩波書店から出し、さらにガブリエル・ヴェールが日本からリヨンに送った書簡を中心にした本は蓮實重彦編・著『リュミエール元年』として筑摩書房から出た。

そのためにリュミエールについては相当に勉強したので、今でもかなり覚えている。今回上映される映画は、リヨンのリュミエール研究所のディレクターでもあるフレモー氏が選んでナレーションによる解説をつけたもので、奇しくも同じ108本。95年のプリントとは半分近く重なっているが。

今回の映画の題名は原語で”LUMIERE!”邦題は『 リュミエール!』」だが、これは『光の生誕 リュミエール!』から取ったのではないかと密かに思っている。私が作ったカタログの表紙には仏文でLumiere!とのみ書かれているし。このことをフレモー氏に言いたかったが、言いそびれてしまった。

さて、「ノスタルジア」が長くなったが、今回の映画『リュミエール!』は想像以上にすばらしかった。カミーユ・サン=サーンスの音楽が、19世紀末から20世紀初頭のフランスや世界の映像を軽やかに盛り上げる。そして解説もユーモアたっぷり。先日東京国際映画祭で立川志らくさんの吹替版を見たが、こちらも悪くない。

個人的には、1900年の万博前後の希望に満ちたパリの人々の姿が強く印象に残った。このエレガントなプルースト的世界は、第一次世界大戦で終わりを告げたのだろう。それにしても、どの映像も魅力的だ。黒沢清監督が「演出と偶然のせめぎあい」と言った通りで、「最初の映画」の原初的な力に溢れている。

|

« トップが変わってもあまり変わらない東京国際映画祭:その(2) | トップページ | トップが変わってもあまり変わらない東京国際映画祭:その(3) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/65976069

この記事へのトラックバック一覧です: 『リュミエール!』をめぐって:

« トップが変わってもあまり変わらない東京国際映画祭:その(2) | トップページ | トップが変わってもあまり変わらない東京国際映画祭:その(3) »