東京フィルメックスはまだ続く:その(3)
もうフィルメックスは終わったが、グランプリの2本のインドネシア映画は見ていない。とりあえずまだ書いていない2本について書き留めておく。コンペの3本目の中国映画『とんぼの眼』は極めつけのヘンな映画だった。
現代美術では知られるシュー・ビンの第一回長編で、監視カメラの映像に音や細工を加えて物語にしたもの。簡単に言うと、尼になる修行を辞めてクリーニング屋で働くチンティンと彼女を好きになったクーフンの話。すべて監視カメラから見つけた映像に、音やナレーションをつけて画像処理をしているという。
確かにショットはすべて固定。それをアップにしたり部分にフォーカスをしたり。最初の寺院のシーンから、クリーニング屋や公園やレストランなどすべて監視用映像で本来は違う顔のはずだが、何となく似て見える。
クーフンはチンティンをいじめた男に復讐をして刑務所に入るが、3年後に出所して動画サイトのシャオシャオが実はチンティンではないかと疑う。実際にチンティンが整形手術を受けていたことは、観客にはわかっている。クーフンは彼女を追いかける。
監視映像なので、多くは日付や時間がはいっている。だいたい2015年から16年が多いが2007年があったり、一番新しいものは2014年4月12日。あちこちをつなぎ合わせているので、日付は前後するが、なんとなく物語がつながっているからあら不思議。
特に道路の激突事故などは、本物の事故なので迫力満点。あるいは病院やレストランや街頭での喧嘩もすごい。最後に膨大な数の監視カメラの場所が出てくる。大半は中国だが、台湾やドバイやスペインもあった。
上映後の監督の話だと、1万2千時間ほどの映像を見て編集したという。元の映像にあった音声を使ったものは2割で、あとはナレーションやセリフや音楽を加えて何となく現代風のドラマができあがっている。何と人を食った映像だろうか。
特別招待のオムニバス映画『時はどこへ?』はジャ・ジャンクーがプロデューサーを務め、BRICSつまりブラジル、ロシア、インド、中国、南アの5か国の監督が参加した中国映画。5本のうち、一番おもしろかったのは、最後のジャ・ジャンクーの『逢春』。
時代劇が始まるのかと思ったら、何とそれは古都のテーマパークだった。自撮り棒を使って撮影する若い女性たちが俳優たちを取り囲む。そこにはジャ監督のミューズ、チャオ・タオもいて、少し疲れた表情。家に帰ると夫がいて、もう1人子供を作るか話し合う。
タオは38歳の役でたぶん実際に近いし、「ジャ監督はこう言っていた」という台詞も出てくる。つまり半分ドキュメンタリーのようだが、40歳前後の夫婦の現在を繊細に見せた佳作だった。
『天使は白をまとう』(傑作!)はベネチアで見ていたし、『山中伝奇』も含めて今年のフィルメックスは中国映画ばかり見たことになる。たまたま空いた時間だっただけだけど。見逃したインドネシア映画2本はどうだったのだろうか。アジア映画はどんどんおもしろくなっている。
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