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2017年11月 5日 (日)

トップが変わってもあまり変わらない東京国際映画祭:その(6)

今年は受賞結果を聞いて笑ってしまった。朝日新聞デジタルの星取表での私の評価と近かったから。いつもは全く違うので、今年もきっと平凡なフランス映画『スパーリング・パートナー』あたりが取るのではと予想していたのに。

グランプリのセミヨン・カプランオール監督『グレイン』については、既にここに書いたように高い評価で、私は星4つ。今年も私は星5つはなく、星4つはほかにマレーシア映画『アケラット―ロヒンギャの祈り』、中国映画『迫り来る嵐』と日本映画『最低。』。

『アケラット』は最優秀監督賞で『迫り来る嵐』は男優賞と芸術貢献賞だから、はずしたのは『最低。』だけ。審査員特別賞の『ナポリ、輝きの影で』は秦さんと共に星3つとしたが、星取メンバーでは3人が星2つ。はずれたのは脚本賞の『ペット安楽死請負人』が星2つで、女優賞の『マリリンヌ』は星1つ。

実は星取メンバー5人が受賞結果発表の前日に集まって、「勝手に」賞を出した。朝日のネットの記事にもなったが、話し合った結果「勝手にグランプリ」が『迫り来る嵐』で「勝手に俳優賞」はカザフスタンの『スヴェタ』の女優とフィンランドの『ペット安楽死請負人』の男優となった。

これをやってわかったのは、極端に意見が分かれた作品は審査では選ばれないということ。みんながある程度以上評価するなかから選ぶしかない。だから我々のなかで評価が分かれた『グレイン』や『アケラット』は落ちた。

本当の受賞作でここで触れていないのは、テーム・ニッキ監督『ペット安楽死請負人』。ペットを安楽死させることを副業にしているヘンな中年が主人公だが、ハードボイルドのジャンル映画のような味わいがある。私は動物愛護とジャンル映画のトーンがずれていると思ったが、主人公の男は実に魅力的だった。

そのほかコンペでまだここで触れていないのは、ルクセンブルクのゴヴィンダ・ヴァン・メーレ監督の『グッドランド』とドイツのマルガレーテ・フォン・トロッタ監督の『さようなら、ニック』だが、どちらもなかなか。『グッドランド』はある田舎にやってきた放浪者を描くが、実はとんでもない場所だったという話。まるでグリム童話のように、ヨーロッパの深い森の奥に潜む悪がうごめく。

『さようなら、ニック』はユルいフェミニズム・コメディで同じ監督の前作『アンナ・ハーレント』に及ぶべくもないが、「ガマン大会」と呼ばれる地味な作品だらけのコンペのなかでは、エンタメ度が高い。同じ男と付き合って振られた女2人が共同生活をする話で、そのうち1人の娘が出てきてからは楽しかった。

『勝手にふるえてろ』はもうすぐ公開なので、後日書くが、私は苦手だった。そんなこんなで、コンペ15本に加えて6本も見たので、かなり疲労困憊。それにしても文句ばかり言いながらもこんなに見ると、この映画祭にだんだん愛着が沸くから困ったものだ。

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