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2017年11月25日 (土)

東京フィルメックスはまだ続く:その(2)

特別招待作品のタイ映画『サムイの歌』がかなりおもしろかった。ペンエッグ・ラッタナルアーン監督は名前はよく聞いていたが、見るのはたぶん初めて。フィルムノワールだが、不気味なユーモアがあるし、話がわかったようなわからないような。

出だしは、夜の雨の街を走る車が交通事故にあうシーンが白黒で見せられる。だんだんカラーになり、中には美女ヴィヤダがいて病院へ運ばれるが、そこで彼女は不思議な西洋人男、ガイに出会う。そこからヴィヤダの日常が写る。彼女のフランス人の夫は性的に不能だがある仏教団体を信奉し、妻を教祖に差し出す。

どうも事故は、夫に怒って家から出たヴィヤダが出くわしたもののようだ。彼女は昼メロで有名なテレビ女優。ガイは夫殺しを手伝い、ヴィヤダは疾走する。ヴィヤダの遺品から教団はガイを割り出して追いかけるが、ガイは老いた母の介護をしている。ガイは教団の追っ手を何とか殺害して捨てる。

なぜか母は急に元気になって、車を運転し始める。画面は一転して明るくなり、整形して田舎で子供と生きるヴィヤダが写る。ガイは彼女を探し出すが、乱闘となる。そこにも教団の手は伸びてくる。ラストでまたびっくり。終ると妙にストンと落ちるが、完全にタガの外れたフィルムノワールだった。

アメリカの1950年代風のこの作品と比べると、中国映画のコンペ作品『氷の下』はもっと今風のハードボイルドだが、タガが外れているのは同じ。主人公の中年男は警察と仕事をしているが、どうも怪しい。銃を手に入れて強盗を企てたかと思うと、いつの間にかロシアのハバロフスクにいる。

バーで知り合った謎の美女ビンビンと関係を持つが(性描写は中国とは思えないほどリアル)、その夫が戻ってきて仲良くなる。夫は中国に戻る日に急に自殺する。それから舞台は中国に戻って、男はビンビンと再会。

時々説明なく場面が飛ぶのでわかりにくいが、雪の中にたたずむ主人公の雰囲気はいい。ツァイ・シュンジュンという監督の3本目だが、確かに才能は感じられる。

同じコンペの中国映画でも、ユー・グァンイーの『シャーマンの村』は、山間部のシャーマンたちを長期間追いかけたドキュメンタリー。3人のシャーマンは元教師や医者だが、太鼓を叩いて歌を歌って治療する。その効き目があるのかはわからないが、何となく続いている。

シャーマン同士で悪口を言い合ったり、酔っぱらったり仲直りしたりと極めて人間的で、どうして彼らがシャーマンなのかわからなくなる。終わりまで見ると、世界のどこにでもある寒村の風景に見えてくる。

日本よりもほかのアジアの国の方が、今やずっと自由な表現に挑んでいるのは間違いない。

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