『ブレードランナー2049』に思う
ようやく劇場で『ブレードランナー2049』を見た。予告編はずいぶん前から見ていたし、なんといっても私が学生時代に封切りで見た『ブレードランナー』(1982)の続編だから、見たかった。友人から「学生に勧めるなら第一作を見てからと言った方がいい」と聞いていた。
実は第一作は授業に使うために部分的には何度か見ていたが、35年前から全編は見直していない。続編を見ると決めて第一作をブルーレイで見たが、本当に見ていてよかった。
続編のおもしろさの半分は第一作からの続きの部分にあった。つまりハリソン・フォード演じるデッカードがレプリカントのレイチェルに恋をして、組織から逃げ去るという前作の結末を覚えていないと、続編の後半の有難みがだいぶ薄れる。
個人的には、前作の舞台となった2019年(つまりほぼ現在)から30年後にどのような世界になっているかに一番興味があった。今回も中心はロス。しかし前作の多くを占める酸性雨の降る香港のような日本のような猥雑な街はほんの一部で、大きなビル以外は草木がない死の都市だ。
前作のキーワードだった「日本」もコンピューターの音声や社名表示に少し残っているくらい。その分、ハングル語もあった。それより、街全体がオレンジがかった不穏な色で、バイオテクノロジーで食べ物を作る工場があるほかは高層ビルしかない。アパートの中は意外に普通だが、ライアン・ゴズリング演じる主人公のKは、ホログラフィーの美女に食事などのサービスを受けている。
つまり食も愛も人工的なものに変えられている。そしてKも含めて出てくる人物さえも、最初は人間かレプリカントかわからない。そんな中で自らの出自を探し回るKの姿が何とも哀愁を帯びて見える。後半に鍵を握るデッカードを探し出してからは、その光景の半分廃墟のような美しさも含めて、胸に迫ってくる。
2時間43分は少し長かったかもしれない。劇場では途中でトイレに立つ人が多かった。たぶんマーヴェルのSFアクション映画だと思って来た人には退屈だったのではないか。しかし私にとってはグッとくる映画だった。見終わってパンフを読んだり映画評を読むと、ずいぶん見落としていた箇所があったことに気が付いた。もう一度見たくなってきた。これは今年見るべき映画だ。
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