うますぎる『おじいちゃん、死んじゃったって。』
森ガキ侑大監督の『おじいちゃん、死んだんだって』を見た。実は8月に試写で見てメモを残していたが、厳しい意見になりそうなので、公開後にアップすることにした。この監督はCM界では名の通った人のようだ。
もちろん、市川準や中島哲也のようにCM出身でも映画で相当の力量を発揮する監督はいる。しかし大半の監督が「やっぱりCM出身」と思わせる映画を作っている。
この作品にはそれを強く感じた。この映画は、若い女性・吉子〈岸井ゆきの)が田舎の2階の家で男とセックスをしている場面から始まる。男は懸命だが女はやる気がなさそうで、かかってきた電話に出る。「おじいちゃん、死んじゃったって」と彼氏に言った後、窓を開けて外にいる父親に大声で伝える。
この設定からしていかにもだ。一瞬で人生の悲喜劇を見せる小技という気がしてしまう。出だしでこう思って乗れなかったせいか、その後の展開がすべて作り物に見えてしまった。
お葬式のために集まる人々。祖母は完全にボケている。東京の大学に通う弟は不満だらけ、父親(光石研)は自分の兄(岩松了)と仲が悪くあらゆる場面で喧嘩ばかり。兄は妻(美保純)に逃げられて息子は引きこもりで、その娘は父が大嫌い。そこに帰ってくる父の妹(水野美紀)は東京で暮らし、独身でお金持ち。
お葬式と宴会、そしてその翌日までの彼らが些細なことで言い争い、笑い、どうにか終えていくさまをコミカルに描く。ときおり、美しい自然を挟み込みながら。盛り上げる音楽やスローモーションも含めて、うまいけれど、どこか引いてしまうのはなぜだろうか。花火のシーンやその後のフェリーニばりのダンスも作りすぎ。
もちろん、このうまさを面白いと思う人は多いと思う。だけど長年映画を見て来た私にとっては、CMの連続にしか見えなかった。似た設定で伊丹十三の『お葬式』があったが、あちらは何倍も映画らしかったと思う。
今は助監督出身よりも、TVやCMや演劇や写真や俳優から監督になる方が早道なのかもしれない。それはいいことだとは思うけれど。
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