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2017年11月 8日 (水)

「エンジョイ」の一言

昨年6月、パリにいた時にニューヨークに一週間行った。1989年に行って以来だった。その時はなぜか幸せな気分になった記憶があるが、去年行ってみていやなところだと思った。その象徴が「エンジョイ」という言葉だった。

それを思い出したのは、「朝日」の日曜版に月一で付いてくる「GLOBE]を読んだから。マイケル・ブースという『英国一家、日本を食べる』で有名な人が「レストランの憂鬱」トップ10を挙げていて、その1位が「エンジョイ」という言葉だった。

ニューヨークではほとんど外食したが、ある程度以上のレストランは料理の皿を持ってくるたびに、Enjoy!とかPlease
enjoy!と明るい声で言う。それを聞いて、「楽しめ」とは大きなお世話だと思った。それをワイン、前菜、主菜、デザートごとにニコニコ顔で言われると、値段が高いのはその言葉と笑顔代に見えた。

気になりだすと、ホテルでもタクシーでも美術館でも「エンジョイ!」と言われることに気がついた。ニューヨーク全体が虚飾の笑顔で満ちているように思えた。たぶん30年前にはそれで幸せな気分になったのだろうが、もう騙されない。とにかくすべてが高いし。

マイケル・ブース氏はこう書く。「何よりすべてのウェーターが犯しうる最悪の罪、どんな料理も間違いなくぶち壊しにするのが、料理を私の前に置くときに必ず添えられるあのささやき。「エンジョイ」。楽しむと決めるのはあくまでも自分。もし他人に言われようものなら、全力で楽しまないことにする」

ブース氏はイギリス人だが、確かにヨーロッパでは「ボナペティ=いい食欲を」に類する言葉はフランス語、イタリア語、ドイツ語にあるが、「楽しんで」とは言わない。今は違うだろうが、かつてはどの店も不機嫌を売り物にしていたようなイギリスのレストランでも、言うとは思えない。

レストランでなくても、知らない人に対するアメリカやカナダの笑顔は気持ち悪い。私は常々わざと不機嫌そうな顔をしている。知らない人に話しかけられたくないから。大学ではできるだけ不機嫌をやめようと思っているが、笑顔は振りまかない。

むやみに笑顔で「楽しみましょう」などと言う人には、絶対にウラがある。こう思う私は単なるひねくれ者だろうか。

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