『ゲット・アウト』に唖然
久しぶりに唖然とした映画を見た。ジョーダン・ピールの監督デビュー作、『ゲット・アウト』のこと。友人からメールで抜群におもしろいと聞いたし、毎日新聞で高橋諭治氏が全米興収チャートで「ノーマークのジャンル映画がひょっこり1位を記録」と紹介していた。
基本的にはホラー映画だが、時々ユーモアが入る。そして全体に微妙な黒人差別問題がからんでいる。前半は黒人男性クリスが交際している白人女性ローズの実家を訪ねるうちに、少しずつ違和感を感じるというもの。
まず実家には黒人の庭師とメイドがいて、クリスを見てどちらも妙な反応をする。両親はいかにもリベラルに見えるが、実は会話の中に差別が見え隠れする。ローズの母親は精神科医で催眠術で禁煙を身につけさせることができるという。夜中に起きるとクリスは彼女に催眠術を掛けられる。
極めつけは、翌日の懇親会で家族の親戚や知り合いが集まるパーティ。みんなが黒人を温かく受け入れるふりをしながらも、どこかヘンだ。クリスは客の中年白人女性が連れている若い黒人の青年との間でトラブルを起こす。客たちは帰り、ローズの両親や弟やメイドたちはクリスを監禁する。
前半から妙な感じが続くが、基本的にはありえることとして進む。中盤からだんだん夢か現実かわからなくなり、後半は過激なホラーへ向かう。クリスは空港のTSA(運輸保安庁)に勤務する黒人の友人と連絡を取り合っているが、彼はクリスが誘拐されたと騒ぎ、大いに笑わせる。
監督は黒人でお笑い芸人コンビで有名らしい。この人種ネタは、たぶんいつもお笑いの中で話していることなのかもしれないが、日本人にはあまり馴染みがないので当惑する。ましてやそれがB級的なホラーにくるまれているから、どう反応していいかわからない。
公開後2週間になるが、週末の劇場は若い観客で一杯だった。私の知らないところでおもしろいという情報が流通しているようだ。いずれにせよ、これが全米一位になったということは、アメリカの現在を知るうえで必見の映画かも。
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