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2017年12月16日 (土)

『ライオンは今夜死ぬ』のJPLに息を飲む

先日見たアルベルト・セラ監督の『ルイ十四世の死』であの『大人はわかってくれない』のジャン=ピエール・レオー(JPL)が死ぬ役を演じたのに驚いていたら、また似たような映画があった。正確に言えば、冒頭に死ぬ役を演じる映画に出ているシーンが写るが、私はその表情を見ただけで息を飲んだ。

1月20日公開の諏訪敦彦監督『ライオンは今夜死ぬ』の話だが、冒頭は湖を望む丘のような場所で、空は晴れ渡っている。そこでJPL演じる俳優のジャンは、死ぬ瞬間をどう演じるか悩んでいる。顔には濃い皺が刻まれているが、表情は晴れ晴れとしている。

ところが共演の女優が個人的な理由で現れず、撮影はしばらく中止になる。そこで近くに住むかつて愛した女性ジュリエットを訪ねてゆく。ジャンは若いままの姿の死んだはずのジュリエットと会うが、それは夢のようでもある。近くには映画を作る子どもたちがいて、ジャンをこっそり撮り始める。

時々ジャンはジュリエットに会うが、それは彼の眼にしか見えないようだ。青いドレスを来た青い目のジュリエットと話したり歌ったり歩いたりするシーンは胸を打つ。一方で子供たちはジャンのアドバイスで脚本を作り、撮影は進むがジャンは時々いなくなる。

ジャンはジュリエットに会ったかと思うと、子供たちの撮影を楽しむ。まるで人生の最後の日々に幻想と遊びを行き来しているように。それを見ていると、JPLという俳優のこれまでの映画を思い出す。

そして最後に映画は冒頭の映画の撮影シーンに戻る。まるでヌーヴェルヴァーグそのものを体現した俳優が、そのまま消えてゆくように終わる。子供たちとの無邪気な遊び、若き日の恋の夢、それが映画の撮影に重なって、ジャン=ピエール・レオーという偉大な俳優の人生そのものを見せる。

いつも光あふれる土地は、南仏のラ・シオタで撮影されたという。リュミエール兄弟の別荘があり、最初の「列車の到着」が撮られたところではないか。映画とは何かを問いかけるこの映画にふさわしい。最初と最後の湖のシーンは香水で有名なグラース。映画に欠けた匂いという要素を作る町が、かくも光の輝きに満ちているとは。

実はあまりドラマがないせいか、見ていると少し眠くなる。むしろ老いたJPLと同化して、時々目をつむりたくなったのかもしれない。しかし終わってみると、忽然と太陽が現れた気がした。

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