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2017年12月 3日 (日)

『ローガン・ラッキー』の安定感

確か映画をやめるといったはずのスティーヴン・ソダバーグ監督の『ローガン・ラッキー』を劇場で見た。これがまれに見る安定感で、最初から最後まで楽しませてくれる。彼の「オーシャンズ」シリーズに比べたらいささか不発弾というか、うまくいかないところもあるが、それがまたいい。

一流の俳優を揃えながらもある種の脱力感を漂わせつつ、一獲千金の犯罪劇をゆるゆると見せる。まず主人公のローガン兄弟はチャニング・テイタム=ジミーとアダム・ドライヴァー=クライドで、ジミーはアメフト選手になりそこなった男で仕事はクビになり、奥さんには逃げられている。クライドはイラク戦争で片腕をなくしている。

そんなポンコツ兄弟が頼るのがダニエル・クレイグ演じるジョー。この俳優はこういう痛快な役の方が「007」などより何倍もおもしろい。兄弟は全米最大のカーレースの会場の金庫から売上金を盗むために、金庫破りで有名な服役中のジョーをいったん会場に連れてくる。

ジョーを刑務所から出すために、弟のクライドはわざと捕まって刑務所に入る。そして2人一緒に脱獄して会場で大活躍し、いろいろありながらも売上金を大量のゴミ袋に詰めて盗み出す。その後は2人でうまく刑務所に戻る。受刑者たちも彼らを巧みに援護する。

しかしその現金トラックは放置されたままで警察に捕まってなんだこりゃと思っていると、FBIの捜査が始まり(捜査官の1人のヒラリー・スワンクが抜群)、実は本当はというハッピーエンドが待っている。

場面がどんどん変わるし、現金強奪にしてはテンポがぬるくてさえないけれど、最後にはすべて帳尻が合ってまあいいかという気分で終わる。さすがソダバーグで、やはり見て損はさせないと思った。

兄弟が歌う「カントリー・ロード」がいい。80年代にジョン・デンバーが歌っていたが、その時点ですでに時代遅れのような感じはあった。それを今頃楽しそうに歌う。携帯電話を持たず、GPSもついていないオンボロ車に乗る彼らの「美学」に、中年の私は巧みに乗せられてしまった。

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