« 香水の話 | トップページ | 『あのころ、早稲田で』を読みながら »

2017年12月21日 (木)

『幼な子われらに生まれ』への違和感

毎年のことだが、年末から年始にかけて映画賞が発表される。見ていない日本映画が賞を取っていると見たくなる。ちょうど名画座ではそういう作品をやっていることが多いので、あわてて見に行く。そんな感じで『幼な子われらに生まれ』を見に行った。

この映画は報知映画賞の監督賞をもらっている。三島有紀子監督の映画は実は初めて見たが、力作であることは認めながらもどこか違うとも思った。

設定がいかにもありそうだ。大企業の会社員・田中(浅野忠信)はバツイチ同士で結婚し、妻(田中麗奈)とその連れ子の女の子2人と郊外のニュータウンに暮らしているが、前の妻(寺島しのぶ)の娘とも時々会う。ところが上の子は反抗期で本当の父親(宮藤官九郎)に会いたいという。

前妻は大学助教授となり、再婚相手は教授だが余命いくばくもない。そのことで前妻や娘が会いに来るため、田中の家族は動揺する。一方で田中は子会社へ出向させられるが、それはネット注文の商品を積み込む配送センターだった。妻は彼との子供を産もうとしているが、田中はすべてにイライラする。

そんなどこにでもあるような「家庭」の話だが、そもそも結婚や離婚にしても子供にしても「家庭」でほとんど苦労していない私にはよくわからない。それは置くとしても、登場人物や設定が「いかにも」過ぎる。いかにもエリート会社員で優しい感じの田中が出向になる。妻は絵に描いたような専業主婦。

前妻は大学院に行って留学までしたキャリアウーマン。配送センターはいかにも人間が機械に動かされる感じだし、そこに向かう新木場へのモノレールは今風。田中の住む郊外のマンションは山の中腹にあって、登るためのモノレールのようなものに毎日乗る。

脚本家と監督が「これが現代社会ですよ」と言いたげだが、本当にそんな人がいるのだろうか。私には『彼女がその名を知らない鳥たち』や『夜空はいつでも最高密度の青色だ』、『最低。』、『光』(大森版)、『ビジランテ』などの極端な若者を描く映画の方がよほどリアリティを感じた。

もちろん浅野忠信を始めとして、俳優たちのちょっとした表情の変化をきちんと捉えた静かな映像の力はあるし、子役も珍しくリアルだ。「あなたは理由は聞くくせに、私の気持ちは聞かないのね」(寺島→浅野)といったセリフも実にうまい。だけど私にはそのうまさも含めて違和感が残った。

それにしても報知映画賞は、作品賞が『あゝ荒野』だし、先ほど私が挙げたような映画はほとんど含まれていない。たぶん私とは感性の違う方々が選んでいるのだろう。

|

« 香水の話 | トップページ | 『あのころ、早稲田で』を読みながら »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/66180636

この記事へのトラックバック一覧です: 『幼な子われらに生まれ』への違和感:

« 香水の話 | トップページ | 『あのころ、早稲田で』を読みながら »