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2017年12月26日 (火)

新聞の「年末回顧」評

いつ頃からか知らないが、新聞の映画の年末回顧で興行収入(興収)のことばかり書くようになった。邦高洋低とか、去年は興収が歴代最高とか。そんなことはたまたま当たる映画があっただけのことで、読者にとっても作り手にとっても関係ないのではないか。

今年はどの映画がおもしろかったか。とりわけ邦画においてどんな傾向が目立ったか。それはなぜか。そんな分析が読みたいのに。

そういう回顧がたぶんない「毎日」(評者のベスト3はある)を除くと、興収ばかり書いている最悪のパターンが「読売」の田中誠記者。今年の興収が「歴代3位だった15年の2171億円を上回る見通しだ」など誰が知りたいだろうか。映画業界の人間さえも多くは関係ないだろう。

邦画については興収の話以外は、海外の映画祭に出たとか賞を取ったとかしか書いていない。そしてどこにも今年の邦画の傾向は書かれていない。

「朝日」の石飛徳樹記者はそれよりずっといいが、邦洋のシェアが逆転することを嬉しそうに書いている。もちろん冒頭に「例年なら日本映画の動向から語るところだが、今年は外国映画から始めたい」と書いているから自覚的だけど。それでも「アート系のトピック」として、フィリピン映画3本について書いているのはすばらしい。

邦画については『あゝ荒野』と『夜空はいつでも最高密度の青色だ』『牝猫たち』が東京の街を描いた秀作として挙げているのは、なるほどと思う。『あゝ荒野』をほめ過ぎるのはどうかと思うけれど。

日経の古賀重樹記者は、オーソドックスに邦画の傾向を中心に書いている。「家族を描く映画に秀作が多かった。そこには一段と不寛容になってゆく日本社会が映っていた」として『彼女が本気で編むときは。』『幼な子われらに生まれ』『ビジランテ』『家族はつらいよ2』を中心に『牝猫たち』『彼女の人生は間違いじゃない』『バンコクナイツ』『海辺の生と死』にも触れている。

『幼な子』と『海辺の生と死』は個人的に苦手だが、なぜ『夜空』がはいっていないのかな(『彼女が』は私は未見)。まあ個人の趣味だけど。

私は邦画に関しては湯浅政明監督の2本のアニメ『夜明け告げるルーのうた』と『夜は短し歩けよ乙女』が触れられていないのが残念だった。よく読んだら「読売」で海外で賞を取った映画として書かれていたので、まあ「読売」もいいか。

さて私個人はと言えば、WEBRONZAに書いた。先週月曜に出したので近日中にアップされるだろう。展覧会ベスト5はもう見られる。ただしこれはあくまで「ベスト5」なのでもちろん興収には触れていない。

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電子版のロングバージョンもご笑覧ください。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO24956820S7A221C1000000?channel=DF280120166618

投稿: 古賀重樹 | 2017年12月27日 (水) 10時41分

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