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2017年12月13日 (水)

今年も学生映画祭:その(3)

今回「映画と天皇」というテーマで映画祭をやって驚くのは、最近になって「右」と「左」の区別がつかなくなったこと。若松孝二監督の『11.25 自決の日』を見てそう思った。若松監督は、パレスチナや北朝鮮(よど号事件)に行った元全共闘とも連絡を取っていた筋金入りの「左」のはず。

その彼が三島由紀夫の自衛隊での自決を撮ったこの映画は、公開時に見ていた。正確に言うと、DVDが送られて来て、いささか批判的な文章を書いていた。

今回初めてスクリーンで見るとずっとおもしろかった。一番驚いたのは、最初に1960年に社会党の浅沼委員長を視察した17歳の山口二矢の映像が出てきたこと。もう一つは、井浦新演じる三島がよど号事件を知って「やられた、先を越された」と言ったこと。

つまりは右であれ左であれ、日本のことを真剣に考えて命を賭けた日本人を、若松描く三島が高く評価していたことになる。この映画では、小説家の三島がなぜ国粋思想に向かったのかは明らかにされていない。とにかく自分のアイデンティティとして、憲法を改正して正式な軍隊を持ち、強い天皇制を敷くことが必要だった。

井浦新は、矛盾の多い三島像を軽やかにかつ存在感たっぷりに演じている。三島の焦りの理由はわからなくても、決起することが彼にとって必要だったことは十分に伝わってくる。自衛隊へ向かう車で三島と若者が歌う「唐獅子牡丹」には、思わず涙が出た。

この上映後に話をした鈴木邦男さんは新右翼団体・一水会の元代表だが、若松監督と親交があり、この映画を高く評価する。ネトウヨを軽蔑し、三島が生きていたら安倍首相のやり方を批判するだろうと述べた。

『日本春歌考』もまたDVDでしか見たことがなかったが、今回初めてスクリーンで見た。最初は不条理劇のような展開に違和感があるが、中盤で伊丹十三演じる教師が亡くなるあたりから、抜群におもしろくなる。終盤の夜中のコンサートで吉田日出子が朝鮮訛りの歌を歌い、小山明子は教室で天皇の騎馬民族説を朗々と語る。

伊丹十三の春歌を始めとして、日本共産党系の労働歌、呑気なアメリカのポップス、右翼の軍歌などが競争のように歌われる。そこから日本の起源が語られて、天皇制が揺らぎ始める。

今思うと、若松も大島も三島と同じく熱き愛国者だったのだろう。


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