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2017年12月18日 (月)

今年も学生映画祭:その(4)

今年の学生企画の映画祭のテーマが「映画と天皇」に決まった時、私はちょっと緊張した。右翼が攻めて来るかもと思ったから。私宛にカミソリが送られて来たり、大学に街宣車が来たりしたら面倒だなと。特に大学に迷惑がかかると、立場上困る。

この映画祭は正式なゼミという形で自分が大学に提案した新カリキュラムなので、大学前で街宣車が騒ぐようだと来年からやりにくくなる。テーマをまず学部に提案するとかになったら面倒だ。

ところが大学にも劇場にも電話一本かかってこない。だんだん寂しくなって、せめて会期中には何かあるかと期待していたが、抗議どころか話しかけられることもなかった。去年の宗教映画祭はお客さんを勧誘している宗教団体がいたけれど、そういう動きもない。

SNSでも「いい企画」「渋いラインナップ」などの声が挙がるだけ。あえて言えば、左の側からの「かつて日大闘争で頑張った芸術学部が鈴木邦男や半藤一利を招くのか」という内容のツイートがあったくらい。わずか10年ほど前にソクーロフの『太陽』(2005)は上映館が見つからず、ようやく銀座シネパトスで公開した時にも右翼が来たのに、この作品を上映しても何もない。

個人的に今回のトークで一番興味深かったのは、佐藤優さん。天皇の生前退位をどう思うかという質問には「憲法違反だよね」。このトークは『軍旗はためく下に』(1972)の後のものだが、当時こうした退位の動きがあったら社会党や共産党は「共和制」、つまり君主をなくすことを提案したはずと言った。

そして「天皇制はなくならない。それは国体が依然として守られているから。外務省が維持している」「現在は天皇支持の密度が濃すぎる。それを一番心配しているのはお堀の向うの人々ではないか」「それに包摂されないとしたら、今の日本では沖縄かアイヌか創価学会しかない」「自分は沖縄のルーツだけど、奥深いところには天皇がある」

それにしても『軍旗はためく下に』はおもしろかった。これは30年ほど前に池袋の旧文芸座で見て以来。ニューギニアの奥地で終戦後に処刑された夫(丹波哲郎)について戦後も事実を求めて探し回る未亡人(左幸子)の話だが、『ゆきゆきて、神軍』にそっくりだと今頃気づいた。

どちらも終戦前後のニューギニアの話を掘り起こし、軍事裁判なしに処刑したとか人肉を食べたとかの話が出てくる。ただしこちらはフィクションでサスペンス構造になっているのがすごい。最後は未亡人が天皇を否定する発言をするのもいい。

映画祭は2千人前後が訪れて大入りだった。それが「密度」の濃さの証明であり、つまりは社会全体が右に寄っているのでこの映画祭は普通に見えて、右翼が来なかったということかも。

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