『南瓜とマヨネーズ』の懐かしさ
魚喃キリコという漫画家の名前は知っていたが、もともと漫画は読まないので『南瓜とマヨネーズ』が90年代末にヒットしたことも知らなかった。劇場に見に行ったのは、友人に「冨永昌敬監督の中で一番いいかも」と聞いたから。
この監督は『パビリオン山椒魚』(06)や『パンドラの匣』(09)を見て、そのキッチュな演出が苦手だと思っていたが、『ローリング』(15)がかなり気に入った。さえない話をだらだら語りながら、画面には緊張感が生まれていた。
今回もさえない話だが、現代の地方を描いた『ローリング』に比べると、ちょっと懐かしい感じだ。原作が90年代末というが、まさにあの時代にさえも遅れて来たような若者たちの話だった。この映画ではタブレットが出てくるので現代とわかるが、そうでなければ80年代かと思う。
ミュージシャンを夢見る恋人を支えるために、ツチダ(臼田あさ美)はライブハウスで働きながらキャバクラのバイトも始める。そこで出会った男(光石研)の愛人になって、一晩に何万円も稼ぐ。
恋人のせいいち(大賀)は、そんな彼女を見ながら何もせず曲も作っていない。ここまでが出だしだが、せいいちは彼女が遅く帰る理由を知ってバイトを始める一方で、バンドの仲間と会いだんだん意欲が出てきて音楽を再開する。
ところがツチダは昔の恋人ハギオ(オダギリジョー)と再会して、できてしまう。ヒモのような恋人を養ったり、お金のために愛人になったり、昔の恋人によろめいたりと、そのいいかげんでずるずるな感じを臼田あさ美が地のように演じている。大賀のさえない呑気さや光石研やオダギリジョーのイケイケな様子も妙に懐かしい。
オンボロアパートに暮らしながら夢を目指すという点で、『火花』にも似た古めかしい青春像があって、グッとくる。冨永監督も年をとって、こんなノスタルジアな空気感が出せるようになったのだと思う。
さて今の若者にこの雰囲気が伝わるだろうか。なんだか難しい気がする。
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