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2017年12月 7日 (木)

『火花』の快さ

板尾創路監督『火花』を劇場で見た。この芸人で俳優の監督作品はこれまで見たことがなかったが、これがなかなかうまい。もともと芸人の又吉直樹の原作が2人の芸人を描いたもので、監督がその世界を生きてきた板尾だけに、その「匂い」がたっぷり伝わってくる。

年上の神谷(桐谷健太)の狂気をはらむ漫才に出会った徳永(菅田将暉)は、弟子入りを申し込む。2人は何度も会って話し込み、酒を飲むが、どこまでが普通の会話か漫才かわからないほど、生活のすべてが漫才尽くしだ。

それぞれは相方とコンビを組んでいるが、徳永は何とかテレビに出て少しは名前が知られるようになる。神谷は金はないのにいつもヒモのような生活をしていて、一向に名前は出ない。

映画は2002年からの10年間の一コマをだいたい2年おきに時々見せる。徳永は一時期は有名になるが、相方が結婚してコンビを解散し、自分も不動産会社に勤め始める。神谷は借金に追われる生活をしていたが、久しぶりに会うと別の女に養ってもらっていた。

終盤に見せる引退を決断してからの徳永と相方の漫才が凄まじい。最初は苦笑いをしながら見ているが、だんだん泣けてくる。徳永が目指した芸人の生き方そのものが露呈する。あるいは再会した時の神谷の台詞もいい。

2時間1分、お笑い芸人の人生にたっぷり浸れる。その空気が映像に充満している。その一方で雰囲気ばかりで彼らの10年間の変化や格闘が具体的にドラマ化されていない気もしてくる。

だから十分に楽しんだけれども、映画らしいドラマの組み立てがもっとしっかりしていたらとも思った。いずれにしても板尾創路の演出は繊細でかなりアート系なのに驚いた。園子温や是枝裕和などの映画に出ているうちに見についたものなのだろうか。

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