« クリスマス撲滅キャンペーン中 | トップページ | 新聞の「年末回顧」評 »

2017年12月25日 (月)

チェコのヌーヴェルヴァーグを見る

フィルムセンターの「チェコ映画の全貌」を終盤間際に行ったが、そこで見たフランチシェク・ヴラーチル監督『鳩』(1960)が抜群に面白かった。チラシに「チェコヌーヴェルヴァーグの嚆矢」と書かれていたし、大島渚の第一回長編『愛と希望の街』の原題「鳩を売る少年」を思い出したから選んだ。

これがフランスのヌーヴェルヴァーグとも大島渚とも似つかない、独特の画面構成の美学を持った映画だった。冒頭の無数の鳩を空に放つシーンからすごい。何十という鳥かごを持った子供たちが山の斜面に並び、一斉に窓を開けて解き放つ。

そのうち1人の少女はなかなか放そうとしないが、命令されて最後の一羽が飛び立つ。ここはフランス語が話されているが、ベルギーのようだ。それから舞台は海岸へ。少女スザンネと老人はそれぞれの鳩を待つが、一向に現われない。ここはなぜかチェコ語にドイツ語も混じっている。

彼女の家は海に面していて、大きな窓からは海が見える。彼女を気に入っている少年は、木彫りの鳩を使って彼女の気を引こうとする。全く何もない海岸に波の音だけが響く。

舞台は教会や古い建物の多い街に移る。チェコ語を話しているからプラハのようだ。車椅子の少年ミーシャはそこで飛んできた鳩を空気銃で撃つ。その鳩を拾ったのは少年と同じアパートに住む彫刻家マーチンだった。

彼らのアパートが超モダンだ。エレベーターは中庭にあり、上から中庭を見るとまるで幾何学模様のように見える。少年が鳩を預かって世話をすると、鳩は少しずつ動き出す。そしてだんだん飛べるようになる。

彫刻家の部屋は最上階でガラス張り。そこで鳩の絵を描いて、スザンネに送る。スザンネはそれを見て自分の鳩が生きていることを知る。少年は鳩を放すことに同意する。

実のところなぜスザンネの鳩がベルギーで放たれるのかわからない。フランス語が必要なのか。そしてなぜ彼女はドイツ語を話しているのか。なぜ彫刻家はスザンネの住所がわかるのか。

すべては謎だらけだが、ひょっとして歴史的な理由があるのかもしれない。いずれにしても冒頭も海岸もプラハのアパートもエイゼンシュテインを思わせるような前衛的な画面構成で作られていて、目が離せない。

フランチシェク・ヴラーチル監督の第一回長編というが、名前も知らなかった。チェコ・ヌーヴェルヴァーグといえば、ミロシュ・フォルマンを始めとして、イジー・メンツェルやヤン・ニェメツ、ヴィエラ・ヒチロヴァー(これはフィルムセンターの表記で従来はヴェラ・ヒティロヴァ)くらいは知っていたが。不覚だった。会場は男性を中心に8割は埋まっていて、佐藤忠男さんもいた。

|

« クリスマス撲滅キャンペーン中 | トップページ | 新聞の「年末回顧」評 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/66193334

この記事へのトラックバック一覧です: チェコのヌーヴェルヴァーグを見る:

« クリスマス撲滅キャンペーン中 | トップページ | 新聞の「年末回顧」評 »