フリーター中年に見られた
先日、近くのアパート数棟の取り壊しがすみ、広くなった場所に大きなマンションを建てるべくブルドーザーが整地をしていた。前に書いたようにこういう光景が大好きな私は、スマホを構えた。すると後ろから「おい、こら!」
「人の家の前でなにやってんだ。ここは俺の店だぞ」。私の後ろの美容室から髪を黄色に染めたヤンキー風の40代が出てきて怒鳴る。「いや、ここを写真に撮ろうと思いまして」
すると「あんた誰なんだ」と大声を挙げて、工事関係者に向かって「へんな奴が写真撮っているよー」と叫んだ。みんながこちらを向いたので、私は撮影をやめて「何を怒っているのかあ」と小さくつぶやいて去った。
するとヤンキーは「平日の昼間にウロウロしているヘンな中年がいるから、危なくってしょうがないよ」「子供もいるんだから」と言った。完全に変質者扱いである。昔ならば大声で怒鳴ったが、今はなぜかその気になれない。
確かにその日の私の見た目は情けなかった。色あせたジーンズに少し破けたパーカーに10年は着ているジャンバー。いかにも金のなさそうな「危ない中年フリーター」だったかもしれない。
新聞社勤務の時もそうだったが、平日の昼間に自宅近くで私がウロウロしていると、怪しげな目で見られる。住んでいるマンションではたぶん「怪しい中年」扱いだろうと思う。若いお母さんたちは、私を何となくこわごわと見ている感じがする。
今は新聞社時代よりもっと自由な時間が多い。そのために大学に移ったわけだが、見た目には怪しいのだろう。でも考えてみたら、みんな朝8時くらいに出てゆく方がおかしいのではないか。会社によってはいろいろあるはずなのに。
会社をリストラされた人、結局就職ができなくてバイトを続けている人、看護師や警備など夜勤のある人、ITなど在宅勤務の人、そもそも自由業など、定時出社でない人は増えていると思うのだが。
そういえば、最近の「毎日」夕刊で今や働く人の約4割が非正規労働者という数字を見た。そこには35~54歳の非正規労働者(女性は既婚者を除く)は268万人と書かれていた。90年代は130万人だった。これこそ本物の中年フリーターで、これがどんどん増えている。
大学で教えていると、毎年卒業してゆく学生を見ながら「とにかく自分で稼げるようになって欲しい」と思う。でも本当は大企業や金持ちにどんどん課税して、その分を貧しい人々に回す社会の仕組みが必要なのだろう。しかし政治は逆に進んでいる。「偽装」中年フリーターの私に何ができるのだろうか。
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