« 『あのころ、早稲田で』を読みながら | トップページ | クリスマス撲滅キャンペーン中 »

2017年12月23日 (土)

『スリー・ビルボード』の展開に驚く

映画祭で一日に何本も映画を見ると、当然ながら1本1本の記憶が危ない。そのうえ、外国の映画祭だと日本語字幕がないので理解度も低くなる。去年ベネチアで見た『スリー・ビルボード』が2月1日から公開というので、試写を見に行った。

ベネチアでは好きな1本だったが、脚本賞と聞いてそんなものかなと思っていた。今回見直して、まさに「脚本賞」がピッタリだと思った。これほど奇想天外なストーリーは珍しい。

冒頭に道路に三つ並んだ古びた看板が写る。題名の「スリー・ビルボード」とはこの看板のこと(だったら「3枚の看板」にすればいいのに)。それを見つめる中年女性がフランシス・マクドーマンド演じるミルドレッド。彼女は看板の広告費を払って、自分の娘がレイプされて殺されたのに捜査が進んでいない事実を赤に黒字で書く。

おもしろいのは、名指しで非難された警察署長も、いい加減で暴力好きなディクソン巡査も、実はいい奴というところ。中盤から話がどんどんねじれて、とんだ展開になる。具体的には公開前なので控えるが、二転三転、四転くらいする。ラストはまさに空いた口が塞がらなかった。

そして娘の復讐をする母親役のフランシス・マクドーマンドが抜群にいい。髪を後ろに結び、化粧っ気なしでジーンズのつなぎを着て、怖いものなしの言いたい+やりたい放題。警察に怒り、闘いを挑む雰囲気は、まるで西部劇のヒーローのよう。

看板に火をつけられたことに怒った彼女が、警察に火炎瓶を投げ込むシーンは迫力満点のうえにおかしい。そのうえ、彼女は近くにいた小人の男の証言で罪を逃れるし、焼きだされた刑事が病院で出会う相手は実は……。すべての展開がユーモアたっぷり。

マーティン・マクドナー監督のオリジナル脚本というが、こんなに自由な物語なのに、映画的な楽しさに満ちている。シリアスでバイオレンスがたっぷりなのに、見ていてクスクスと笑ってしまう、映画好きにはたまらない、素敵な映画だ。

この映画はトロントで「観客賞」を取ったというから、アカデミー賞の候補だろう。ベネチアで金獅子賞の『シェイプ・オブ・ウォーター』との戦いになるのではないか。ベネチアは本当にアカデミー賞の前哨戦になってきた。


|

« 『あのころ、早稲田で』を読みながら | トップページ | クリスマス撲滅キャンペーン中 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/66033353

この記事へのトラックバック一覧です: 『スリー・ビルボード』の展開に驚く:

« 『あのころ、早稲田で』を読みながら | トップページ | クリスマス撲滅キャンペーン中 »