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2018年1月29日 (月)

『ナチュラルウーマン』の強さ

2月24日公開の『ナチュラルウーマン』を試写で見た。チリのセバスチャン・レリオという監督の映画で、アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされたので見てみようと思った。

これがなかなかおもしろかった。トランスジェンダーで女性として生きるマリーナは、昼はウェイトレスをしながら夜はナイトクラブで歌う。彼女には父親ほどの年の恋人のオルランドがいたが、ある夜突然部屋で意識を失ってしまう。

マリーナはオルランドを病院に連れていくが、オルランドは息を引き取る。その後は警察の意地悪な捜査があり、元妻や息子からの嫌がらせが続く。彼女は葬式に出ることも禁じられる。

最初の10分ほどでオルランドが亡くなってからは、特に何が起こるわけではなく、ひたすらマリーナのつらい日々が続く。ところが警察や彼の家族と言い争いをしたり、恋人の夢を見たりする様子を見ているうちに、だんだんとハマってくる。

警察の捜査で彼女が裸にされて写真を撮られるシーンがある。彼女の上半身の美しさには息を飲む。そして木の葉が舞う強風の中を必死で歩く姿、オルランドの息子たちに車の中で顔じゅうにセロテープを張られた時の表情、元妻や息子の乗る自動車に立ちはだかり、車の上に乗って怒る姿。

黄色や青のドレスや青のシャツ、クリームのジャケット、そして最後に着る黒の盛装。マリーナの着るものが印象に残る。それ以上に彼女を演じるダニエラ・ヴェガの肉体そのものが、愛と憎しみと喜びと怒りのすべてを見せる。

後半、ふとしたことからオルランドが残した鍵がどこのものかわかる。これをたどっていけば新しい展開が生まれるかと期待するが、そうでもない。むしろ何もないところから、彼女の新しい人生が始まる。

冒頭も含めて何度か出てくるマリーナの歌うシーンが愛おしい。ボーイソプラノが少し枯れたような特徴のある声だ。少しだけしゃがれた声の粒が伝わる。とりわけ最後の「オンブラ・マイ・フ」を聞いた時は、体の中を戦慄が走った。

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