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2018年1月17日 (水)

高崎で展覧会2つ

高崎の映画館に講演に行ったついでに、美術展を2つ見た。高崎は25年ほど前に、最初の職場の仕事で群馬県立近代美術館に行ったきり。この美術館は駅から少し離れているので、駅周辺を回ろうと思ったら市立美術館が2つもあった。

西口から徒歩3分の高崎市美術館では、1月10日まで開催の「生誕100年 清宮質文(せいみや・なおぶみ) あの夕日の彼方へ」展を見た。1917年から91年まで生きたこの木版画家は、たまに作品を見ることがあったが、まとめて見るのは初めて。

小さな美術館だが、展示室は1階から3階まであって、淡い色の木版画がびっしりと並んでいる。子供、猫、海、空、野原、家、花、瓶などなど。中には《透明な悲しみ》のような抽象的なテーマもあるが、それも丸や四角などの形が描かれている。

1点物のモノタイプやガラス絵も多い。すべて小さくて、大きくても20センチ×30センチくらいか。具象と抽象を行き来しながら、人間のちょっとした感情をさらりと定着させている。

「清宮質文」展が、日常の些細なしかし強い感情の揺らぎを小さな絵に押し詰めていたのと対照的だったのが、「松本哲男 360度の世界」展。こちらは東口1分の高いビルの3Fにある高崎市タワー美術館で、1月28日まで開催中だが、10メートルを超す巨大な絵画が並ぶ。

松本は1943年生まれで2012年まで生きているから、清宮より20数年後の世代。描かれているのは、ナイアガラ、イグアス、ヴィクトリア・フォールズの「世界三大瀑布」を始めとして、エジプトや南米、中国などの広大な景色。わずか28点しかないが、世界を巡った気分になる。

ソファに座って、四方に広がる広大な景色を眺めていると、世界にとって人間の存在なんてたいしたことではないのではないかと思う。人類があと50年後に滅びても、これらの滝はそのままだろう。

タイプの違う2つの展覧会を見て頭がくらくらしてきたが、気分を持ち直して映画館に向かった。1時間の話で言うべきことを2、3忘れてしまったのは、極小から極大に至る2つの展覧会のせいかもしれない。

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