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2018年1月 4日 (木)

世界のヌーヴェル・ヴァーグを追って:カヴァロレヴィッチ

1950年代後半から始まった「ヌーヴェルヴァーグ」を世界的な視点でとらえようと、年末年始に数本の映画をDVDで見た。たまたまフィルムセンターでチェコのヌーヴェル・ヴァーグの映画を数本見たのがきっかけだった。

通常、東欧のヌーヴェルヴァーグと言えば、チェコよりポーランドが有名だ。というわけで、手元にあったDVDからイエジー・カヴァレロヴィッチの『夜行列車』(1959)を見た。これがかなりの出来でびっくりした。

1959年といえば、『美しきセルジュ』と『いとこ同士』が相次いで公開され、『大人はわかってくれない』がカンヌで賞を取り、『勝手にしやがれ』が作られた(公開は翌年)。つまりはフランスのヌーヴェル・ヴァーグの年だが、カヴァレロヴィッチといえば、もうこの時点で5本ほど作っている。

彼のみならず、アンジェイ・ワイダやアンジェイ・ムンクなどの「ポーランド派」はみな50年代半ばにデビューしている。日本でいうと、大島渚や吉田喜重の前に注目された増村保造とか中平康とか市川崑とかの「モダン派」の世代だろう。

『夜行列車』は、海岸の保養地へ向かう列車の一晩を描く。サングラスで現れる主人公らしき男は、そこでさまざまな人々を見る。なぜか自分が予約した一等の客車のチケットを持つ美女。彼女に求愛をする若い男は2等車にいる。新婚カップル、老いた司祭と若い司祭、男女の車掌同士の愛などさまざま。

列車が停車して警察が乗り込むところから、映画は一挙に緊迫する。主人公イエジーは妻殺しの犯人に間違えられるが、真犯人は車内を逃げて列車を飛び降りる。止まった列車からは乗客たちが犯人に向かって走り出す。

いわゆる「グランドホテル」形式でさまざまな人生の断面を見せながらも、動く列車という条件を最大限に使ってそれぞれのドラマを際立たせる。さらに殺人犯を加えることで、彼らの人間性は一層あらわになる。

一般にヌーヴェルヴァーグの特徴としてはロケ撮影、素人の起用、即興演出などが挙げられるが、この映画に関してはロケ撮影以外は、全くオーソドックスな映画だ。しかし全体に流れる厭世的な雰囲気というか虚無感は明らかに新しい。

私の記憶では、ワイダの『世代』(55)や『灰とダイアモンド』(58)はもっとストレートに反体制的な内容だったはずだ。このように澱のように溜まった暗い感情の表現は、今見るとアントニオーニなどとつながる気がする。

そういえば、2007年末にカヴァレロヴィッチが亡くなった時に、それに気づいて新聞に載せるべきだと提案したのは私だったことを思い出した。あれからもう10年もたつ。

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