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2018年1月24日 (水)

ポルノ以前の西村昭五郎

一昨日、帰宅難民になりかけたのは、実は渋谷で西村昭五郎の映画を2本立てで見たからだった。この監督は何と言っても日活ロマンポルノ第一号の『団地妻 昼下がりの情事』(1971)で映画史に名を刻まれている。

ロマンポルノを80本以上作って昨年亡くなったが、神代辰巳や田中登のような評価はなかったと思う。ある友人が「ロマンポルノが始まらなければ、今村昌平のような傑作を撮っていたのでは」とメールを送ってきたのが気になっていた。

とにかくポルノ以前を見たいと思ってたまたま見たのが、『やくざ番外地』(69)。丹波哲郎主演の現代劇だが、話は東映の任侠ものに近い。多摩を縄張りとする高瀬組をつぶすために野見組から送り込まれた村木(丹波哲郎)は、地元のチンピラたちを使って、血生会というヤクザに仕立て上げて高瀬組に向かわせる。

ところが高瀬組には、かつて村木が兄弟の契りを結んだ塚田(佐藤慶)がいた。そのうえ、村木と原宿の高級マンションに一緒に住む妹(山本陽子)は高瀬組の三代目の恋人となり、塚田は複雑な立場に置かれる。終始背広を着て、組長の指示と個人的な感情の間で無表情で悩む村木役の丹波哲郎がおかしい。

最後は高瀬組を乗っ取った横浜の葛木組と、手打ちをした野見組の組長の宴会に村木が単身で乗り込み、皆殺しに。その時の白いスーツの丹波が何ともカッコよかった。山本陽子が華奢で何ともかわいらしく、佐藤慶の妻役の小畑絹子も妖艶。最後まで手に汗を握りながら見た。

いろいろ忙しいので1本だけ見る予定だったが、2本立てなので次の『刺客列伝』(69)も見た。こちらは昭和初期が舞台で、冒頭、刑務所から出た高橋英樹演じる樋口が雨の中の吊り橋で敵討ちをする場面の美しさに驚く。

樋口は千葉の松田組の工事現場に雇われるが、そこはとんでもない労働条件だった。元ヤクザだとバレた樋口は、労働者を見張る用心棒に加わる。こちらの映画は『刺客列伝』に比べると用心棒同士の内紛が多くてドラマが弱いし、近くで花を栽培する女(松原智恵子)が出てくるのも唐突。

もっとびっくりなのは1時間も過ぎたあたりで、大陸帰りの新田兄弟(兄は宍戸錠!)が加わるあたり。1960年代風の格好で拳銃を振り回す。そして労働者たちを救おうと、七人の用心棒が夕日のなかを松田組に向かって歩き出す。何だこれは。

色とりどりの花に囲まれた松原智恵子の場面もそうだが、姫田真佐久の丁寧なカメラが光る。この2本は今見てもそれなりに楽しめるのだが、日活はなぜこれから2年後にロマンポルノに転換したのだろうか。そんなことを考えながら歩いていたら、帰宅難民になりかけた。

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