« 目白の美食の穴場 | トップページ | 剣道ノスタルジア:続き »

2018年1月31日 (水)

『ジュピターズ・ムーン』の妙な魅力

ハンガリーのコーネル・ムンドルッツォ監督の『ジュピターズ・ムーン』を劇場で見た。「日経」の映画評で中条省平さんが5つ星をつけて絶賛していたからだが、なかなか妙な魅力を持った映画だった。

冒頭、シリアからの難民たちが写る。密入国のボートに乗るが、ハンガリーの国境警備隊は銃撃で迎える。逃げようと必死の親子が別れ別れになる。息子の方は逃げようと走って撃たれるが、なぜか体は宙を浮遊し始める。

ハンガリーの医者、シュテルンは医療ミスの補償金を払うために、あらゆる機会を探して小銭を稼いでる。彼は空を飛ぶ青年アリアンを見つけて、金儲けをたくらむ。

患者の家や街の通りで突然宙に舞うアリアン。しかし国境警備局の刑事は彼をテロの犯人と見て、追いかける。シュテルンはアリアンと共に逃げ出す。

全体にどこかピンと来ないが、あちこちが気になる。まず、シリアの難民たちの姿が実にリアルだ。アリアンは父親を捜すためにブダペストの東駅に行くが、そこには亡命シリア人たちがたむろしている。

そしてシュテルンは半分人生を投げたような倦怠感を見せながら、恋人に接し、アリアンを利用して金を稼ぐ。刑事はまるでフィルムノワールのように、疲れたダメ刑事の執念を見せる。時おり出てくる黄色い部屋はまるで『エレメント・オブ・クライム』みたいに怪しい光を放つ。

そして冒頭の逃げるシリア人のシーンを始めとして、アクションシーンを恐るべき長いワンカットで見せる。アリアンが何度か宙を舞うシーンも、ブダペスト市内の数分に及ぶカーチェイスもすべてワンカット。

行き場を失ったシリア難民といういかにも現代的なテーマを扱いながら、古今東西の映画を思わせるようないい感じの人物やアクションが連続する。それに何より、アリアンが宙を舞いながら見る古都ブダペストが抜群に美しい。

この監督は去年のカンヌのコンペに選ばれる前もそれまでの作品があちこちで賞を取っているようなので、ぜひこれまでの作品をまとめて見たいと思った。公開された『ホワイト・ゴッド』も見ていないし。次はハリウッド進出とらしいが、大丈夫かな。

|

« 目白の美食の穴場 | トップページ | 剣道ノスタルジア:続き »

時代」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/66334211

この記事へのトラックバック一覧です: 『ジュピターズ・ムーン』の妙な魅力:

« 目白の美食の穴場 | トップページ | 剣道ノスタルジア:続き »