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2018年1月20日 (土)

『RAW』の衝撃

2月2日公開のフランス映画『RAW』の試写を見た。ジュリア・デュクルノーという女性監督の初作品で、一昨年のカンヌの批評家週間に出てカニバリズム(食人)映画として話題になったのを記憶していた。原題はGrave=(重い、大変だ、深刻だ)で、英題=邦題とはだいぶ違う。

単なるもの騒がせな映画かと思っていたが、「ルモンド」紙などがまじめに評価をしていたので見に行った。これがかなりの当たりだった。

冒頭、両親が娘を車に乗せて走る。着いたのは学校のようで両親は「古くなったなあ」。どうも姉が既に学んでいるようだが、電話をしても迎えに出てこない。それから上級生による新入生歓迎の儀式が始まる。うさぎの腎臓を生で食べさせられたり、新人が集まったところに大量の真っ赤なペンキが降って来たり。

そこは獣医学校で、16歳の娘はベジタリアンだったこともあり、大きなショックを受ける。出だしのトーンは明らかにホラーで、それが苦手な私は見に来たことをちょっと後悔した。ところが娘が同室のゲイのアドリアンと仲良くなり、姉と遊び始めてから少しずつ興味が湧いてきた。

彼女が姉としでかすことのすさまじさは、とてもここには書けない。私は女性の立ちションを初めて見た。そして姉とアドリアンによって「肉の喜び」を知った娘は、自分でもわからない無茶苦茶な方向に走り出す。それからたどり着いた先は、何でもアリに見えた獣医学生たちをも驚愕させる。

そして最後に両親と再会する場面になると、ああこれは「狼の血族」だったのかと、全体がわかったような気になった。つまりはファンタジーなのだと。

とにかく最初から最後まで感覚を刺激し続ける映像、色、音、音楽がすごい。最初はそれが単なるセンセーションを狙ったものかと思っていたが、映画が進むにつれてなかなか奥が深いものに思えてくる。

この映画はカンヌの批評家週間でグランプリと国際批評家連盟賞を取り、ロンドンやトロントなどいくつもの映画祭で賞を取っている。新人が世の中に出て行くのは、ここまでしないといけないのだと思った。将来、映画監督や脚本家を目指す若い人(特に女性)は、絶対に見た方がいい。

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