『きょうも傍聴席にいます』に涙する
ちょっと書くのが恥ずかしいが、最近一番泣いた本が幻冬舎新書『きょうも傍聴席にいます』。実は「朝日新聞デジタル」つまり朝日のネット版で連載されているもので、「朝日新聞社会部編」だが、抜群におもしろい。そして何回も泣ける。
裁判を傍聴した社会部記者がその様子を実況のように報告するもので、新聞紙面ではこの長さの掲載はとてもできないが、ネットならばできる。
監修をしている担当デスクが旧知のMさんだったこともあっていくつかネットで読んでいたが、本屋さんで新書を見つけて買ってしまった。ネットではあっても記者の書く文章だから、無駄なくシンプル。1本が5ページから15ページくらいで、地下鉄2駅も過ぎたら一つが読める。
そしてその一つ一つに人生が凝縮されている。最後の判決が出るところで、思わず泣いてしまうことが多い。その意味で一冊でこれほど何回も涙ぐんだ本は、これまでにないのでは。
冒頭にある事件が強烈だ。「絶対君主が支配する家」と題して、祖母(絶対君主)と母に長年虐待された三女が2人を殺した事件で、三女を助けた長女の裁判記録だ。その虐待を長女が語る部分がすさまじい。
食事は「小麦粉を焼いて、マヨネーズをかけて、生ゴミを乗せられていました」「台所の排水のところにあるものです。柿やリンゴの皮やヘタ、お茶の葉が多かったです」
三女は逮捕され、医療少年院にいる。長女への判決は懲役3年執行猶予5年。「裁判長は姉妹の置かれた状況に同情を示し、「犯罪が低い事例」としながらも、「これからやり直していくにあたって、事件を忘れないようにしてください」と説諭した。長女は涙声で「はい」と小さくうなずいた」。
こんな話が28本。司法試験の合格を目指した男が、妻と不倫関係にあった男性弁護士の局部を切断し、トイレに流した事件(4年6ヵ月の実刑判決)など、夢を見そうだ。とにかく記者の刈り込んだ短文の行間を読むのが楽しい。この本には小説や映画になりそうなネタが満載だと思ったが、どうだろうか。
新聞社に勤めていた時は、「社会部」の人々が苦手だった。文化事業部を一番バカにしていたからだが、今となってはどうでもよくなった。この本はとにかくおススメ。
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