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2018年2月17日 (土)

『はじめてのおもてなし』に唖然

ドイツ映画『はじめてのおもてなし』のくだらなさに唖然とした。確か朝日、日経、毎日の映画評で絶賛されていたし、なによりかなり客が入っているという話を聞いて、ぜひ見たいと思った。大学の入試業務の合間を見つけて、文字通り映画館に駆け込んだ。

これが絵に描いたようなステレオタイプの家族もので、映画になっていない。難民受け入れというシリアスなテーマを喜劇タッチで描いたものだが、すべてがいかにもの型通り過ぎて、私は全く笑えなかった。

ハートマン家の夫は大病院の医長で職場では威張りちらし、現役を退かないと宣言。そのうえ、整形手術を受けてモテようと企てる。妻は元教師で夫にかまわれず、あまりに暇なので難民を家庭に受け入れようと思いつく。息子は弁護士で妻に逃げられて、ゲーム中毒の息子を育てる。娘は30過ぎの自分探しの大学生。

そこにナイジェリア出身のディアロがやってきて、みんなが人生の意味について考える。「なぜ整形するの」とか「どうして自分を探すの」とか「夫を尊敬しないと」とか。いかにも「途上国から先進国への素朴な質問」で、これ自体がアフリカ人やイスラム教徒への偏見に見える。ボコ・ハラムに親兄弟を殺された青年が、これほどナイーブであるはずがない。

この映画は、イスラム教徒はテロリストではない、難民をもっと理解しましょうという考えを、喜劇の形で巧みに見せる、いわばプロパガンダのたぐい。それなのに、こんなに型通りの難民では芸がない。例えば、長男が赴く上海で会議に出てくる中国人も、従来の目の吊り上がった無口なアジア人のパターンそのもの。

この映画は2016年のドイツで一番のヒットで、400万人が見たという。日本に直すと興収が50億円を越すから、なかなかの大入り。それでも昔はこうしたドメスティックな大ヒットコメディは、フランス映画でもイタリア映画でも日本には来なかった。

これが日本にまでやってきて、スマッシュヒットというのはどうなったのか。公式HPを見ると絶賛の「文化人」もいる。これで難民問題を理解できるとは、あまりに楽観的ではないのかな。娯楽作については評論家でも意見が分かれるのが常なので、別にいいのだけれど、私は苦手な映画だった。

サイモン・バーホーベンという名前は、2度と見ない監督として覚えておく。ついでに新聞で絶賛した書き手とコメントを寄せた「文化人」も。


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