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2018年2月14日 (水)

驚異のルドン展

ある画家の大きな個展を見ると、これまでの見方が大きく変わることが多い。三菱一号館美術館で5月20日まで開催中の「ルドン―秘密の花園」展は、まさにそういう展覧会だった。オディロン・ルドンは、印象派の画家たちと同時代だが地味な印象が強かった。

モローばりの幻想的な絵が有名で、版画が多い感じ。ところが今回初めて大きな個展を見たら、彼なりの独自の世界を築いた大画家だということがよくわかった。

この展覧会は、植物に焦点を当てた初めてのものだという。しかしその草花が尋常ではない。人間も植物も花瓶も空も、ある種の装飾のようにひと続きのものとして現れる。幻想のなかの模様といったらいいのか。

それが一番現れるのは、《ドムシー男爵の城の装飾壁画》だろう。オルセー美術館所蔵の15点に大きな一室が当てられていて、まるでその部屋にいるかのような気分になる。ひまわりを中心に、無数の草花や木々が並び、宙をも舞う。

そこに加わったクリーム色の背景が幻想性を高め、まるでトリップしたような気になる。実はこの壁画の中心になる《グラン・ブーケ》は三菱一号館美術館の所蔵で、別の部屋でブルーの花瓶が際立つ鮮やかなこの絵が出てきた時は息を飲んだ。この絵はここの目玉でいつも展示しているが、これほどすごい絵だとはこれまで思わなかった。

版画も含めて、彼の世界には博物学、文学、宗教、神話などの濃い物語が充満している。印象派からポスト印象派にかけて絵画の純粋性を追求していった流れとは反対に、不純な要素をどんどん取り込んでそれを内的に押し込めて、シュールな世界に飛び立っている。

作品はオルセー美術館を始めとして、ニューヨーク近代美術館やワシントン・ナショナル・ギャラリーなどまさに世界中から集められている。この美術館が《グラン・ブーケ》という大作を持っているがゆえに、内外の美術館も協力したのだろう。

企画展ながら、美術館が傑作を所蔵することの重要性を改めて感じさせた展覧会でもあった。今年のトップクラスの驚異の美術展である。

調べてみたら、ルドンはモネと同じ1940年生まれ。ルノワールは一つ上だった。ルドンはどのように印象派を見ていたのか、知りたくなった。

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