『アマゾンの料理人』を読んで
もし人生をやり直せるなら、一度やってみたいのは料理人だ。世界中で修行した後に、一番食材が好きになった土地で、それを生かした料理を出す店を作りたい。そんなことを考えていたら、本屋で太田哲雄という人の書いた『アマゾンの料理人』という本があった。
「世界一の”美味しい”を探して、僕が行き着いた場所」が副題で、「美味しいって結局なんだ?」「「エル・ブジ」ほか数々の三ツ星店で修業」などのコピーが並んでいる。久しぶりに、一切の予備知識なく思わず買ってしまった。
アマゾンの奥地で自然食材をどう料理するかという本かと思ったが、それは後半の一部で、全体は「ぼくの料理修行世界旅行」という感じ。軽い内容と文体で、1時間と少しで読み終わった。
筆者は長野県の高校生の時に「料理の哲人」を見て、シェフに憧れた。高校卒業後、イタリアに三か月語学留学し、休日は食べ歩き。それから帰国して4年間日本のイタリア料理店で修業後、再びイタリアへ。フィレンツェやエミリア=ロマーニャの名店で修業。ピエモンテ州の「ラ・フェルマータ」ではデザート・シェフに。
そこでデザートの仕事を個人として受けたり、マフィアのボスと仲良くなったりしながら、次はスペインの伝説の店、「エル・ブジ」での半年の修行。それから、ミラノでプライベートシェフとして金持ちマダムに仕えた後に帰国。
日本の親戚からピザを作ってと頼まれたのがきっかけで、ピザの修行に再びイタリアのべネト州に行く。それから新しいグルメの地と話題になっていたペルーへ。まずは伝統料理の店で働いた後に、カリスマ・シェフのガストン・アクリオの元で1か月研修。従業員になれと持ちかけられるが、2か月半働いて辞めてしまう。
そしてアマゾンに通い始める。そこで見つけたカカオを加工せずに直接輸入し、国内のフランス料理店に卸すことを始めた。一方で出張料理や料理教室をしているという。
著者の太田氏は80年生まれだから、まだ30代。こんな本を出したら、「お店を出さないか」という人が現れそうだ。でも、本を読む限り飽きっぽい性格のようだから、長続きしないかも。
それでも料理人として世界を歩く姿は、本当に楽しそうだ。私も料理が好きで、スーパーに行くだけで胸が躍る。包丁を持つと、自然とアイデアが湧く。しかし自分が若い頃には、こんなに自由に世界を渡り歩くことは考えもしなかった。
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コメント
すらっと、読めるの、よいですよね。
昨年の9月の終わりころにポールオースターの本の話がありました。僕は、ポールオースターを知らなかったので、そのあとkindleでダウンロードして読み始めました。「4321」という小説です。結構、面白く毎日読んでるのですが、まだ終わってません(3か月以上)。いま読んでいるところがほぼ90%、読み終えるまであと6時間くらいだそうです。「ドラゴンタトゥーの女」の3部作はそれぞれ結構長かったのだけど、こんなに掛からなかったように思います。
「4321」は、1人の若者(ファーガソン)についての4つのバージョンでの青春?を書いてあり、なかなか面白いのですが。
投稿: jun | 2018年2月16日 (金) 20時35分