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2018年3月20日 (火)

長崎の古い写真に酔う

先日、フィルムセンターの「発掘された映画」の特集で、「古い映画なら何でも見たい」気分になったが、今度は「古い写真なら何でも見たい」と思った。東京都写真美術館で5月6日までの「写真発祥地の原風景 長崎」を見たから。

これは毎年都写美で開かれている初期写真シリーズで、今回は江戸時代の外国への港であり日本の写真発祥地である長崎にテーマを当てている。出品されているのは、江戸後期から明治中期までの写真やアルバムが中心で、長崎大学図書館や長崎歴史文化博物館のものが多い。全体で300点を超す展示物が会場をびっしりと占める力業だ。

冒頭に木版画や墨画や日本画で長崎の地図が多数展示されているのに驚いた。オランダ人を描いた絵や木版も多い。いわゆる「紅毛人」や「紅毛船」だが、よほど珍しかったのかずいぶんある。それから1860年頃から写真が出てくる。

フェリーチェ・ベアトやピエール・ロシェ、A.F.ボードウィンのものに混じって、明治になると日本の写真家もすぐに活躍する。上野彦馬・幸馬兄弟、内田九一など大勢いるが、一番多いのは長崎港の全景パノラマ。入口のあたりにベアトのパノラマと現在の長崎港の写真を拡大したものが展示されているが、港の形は変わっていないのでおもしろい。

それから長崎の町中の写真が何とも美しい。平屋の茅葺や瓦の屋根がびっしり並ぶ長崎の美しいことといったらない。江戸時代が日本の文化や生活の絶頂期だったのではないかと思ってしまう。

1年ほど前に長崎に行った記憶で言えば、眼鏡橋の写真が数点あっておもしろかった。現在では川の両側にビルやマンションが建っているが、当時は一戸建てが川に張り出すようにみっしりと並んでいる。川に落ちそうなくらい張り出した家もある。とにかく情緒たっぷり。

あるいは明治中期に本籠町商店街を撮った写真には、店の看板に英語とロシア語があった。既にロシアの客がいたのだろう。外国人相手と言えば、《長崎人力車賃銭図》という多色の木版画は、実に細かい地図に料金を入れたもので、完全な和英併記。これを持っていたら、外国人も安心して人力車に乗れただろう。

この展覧会が圧巻だったので、同時開催の「『光画』と新興写真 モダニズムの日本」展はかすんでしまった。こちらもいつか触れたい(が)。なお、長崎展はこの後長崎歴史文化博物館に巡回する。地元の人が見たら、たくさんの発見があるのではないか。

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