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2018年3月 6日 (火)

中年たちの墓参り

新聞社に勤めていた頃の先輩、田中三蔵さんの七回忌に誘われて、多磨霊園に行った。参加したのは、田中さんと一緒に美術記者として仕事をしたことのある後輩6人だった。

といっても、今も現役で美術記者をしているのは1人で、あとはみんな別のことをしている。一番の年長者は今年の2月で65歳になり、新聞社との定年延長契約も終わった。その次が大学で映画を教える私。

その下に美術記者がいて、次は、ある部署の局長職で参加者では一番「エライ」人。その次は地方の県庁所在地の支局長で、一番若いのは東京本社のデスク職。

つまりは40代から60代まで、中年男が揃って墓参りをした。おかしかったのは、墓に手を合わせる順番で、だれかが「年上の順に」と言った。まさか「エライ」順はないにしても、妙なところで年齢が出てきた。

田中さんは脂っこいものが大好きだった。とんかつとかから揚げとかに目がなかった。だから早く亡くなったのかはわからない。お墓には彼が好きだったカツサンドを並べた者がいた。

正午に武蔵小金井駅に集まってお参りしてみんなで写真を撮り、それから駅前で昼食を取ることになった。駅は大きいのに近くに店が少なく、結局駅に近いビルのとんかつ屋へ。「田中さんが喜ぶだろう」と言いながら。

それからビールを飲んでとんかつを食べただけだが、2時間よくしゃべった。新聞記者は他人の悪口を言うのが大好きで、例のごとくそこにいない人の話で盛り上がった。美術記者をやったヘンな人列伝や困った記者の話が次々と出てきた。数奇な運命をたどった人も多い。逮捕されて退職した人もいたし、セクハラ発言ばかりしていた人も中途で辞めた。

あいつはどうなった、こういつはどうなった、と次々に出てくる。かつて文化部にいても、その後は社内の全く別の部署にいる人も多い。集まった6人は私を始めとして久しぶりに会う者が多いから、いろいろな人の消息をたどるだけで時間が過ぎてゆく。

大学では同僚と話しても、あまり他人の話はしない。ましてや悪口は言わない。ほとんど関係ないから。ところが久しぶりに新聞社の連中と会うと、その悪口の渦が無性に懐かしく、楽しかった。ほぼ全員が別の部署にいることもよかった。

葬式もそうだが、お墓もお墓参りも生き残った者たちのためにある。死者が招きよせて、生きている者が集い、故人の話から派生して四方山話をする。中年にとっては「生きている」と感じる瞬間だった。

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