« 確定申告に挑む | トップページ | 暗澹たる読書:その(1)『新・日本の階級社会』 »

2018年3月 1日 (木)

古い映像なら何でも見たい

フィルムセンターの「発掘された映画たち2018」にまた行った。皇室を撮ったドキュメンタリーを見ているうちに、サイレント時代の映像なら何でも見たくなった。今回は、「野田醤油、鈴木商店の記録と濱口雄幸の葬儀記録」。

要は1930年前後の企業PRやお金持ちの葬式やホームムービーだが、これもなかなか楽しめた。圧巻は『野田醤油株式会社 第十七工場 披露祝賀会 大正十五年四月二日・・・三日』(1926年、56分)。

題名通り新工場の披露会だが、芸者が少なくとも百人以上は上野駅から乗り込み、商工大臣や千葉県知事が挨拶をするという豪勢なもの。制作は「勝本映画製作所」だが、字幕の画面すべてにキッコーマンの「萬」の字のロゴ入りだから、今ならPR映画と言うべきだろう。

最初に敷地が9万坪で、職員300人、工員2000人といった数字が出てくるが、すぐに上野駅で芸者衆が列車に乗り込むシーンが写る。着飾った彼女たちは、カメラを嬉しそうに眺めて笑い出す。まるでリュミエールの映像のように素朴な感じ。「日本橋」など旗を持った男性(太鼓持ち?)も数名いる。

列車の中で芸者衆はサンドイッチを食べたり、縫物をしたり、窓の外を見たり、化粧を直したり。列車が野田駅に着くと、おそろいの日傘が全員に配られる。

それに比べると、商工大臣や来賓の乗る臨時列車はあまりおもしろくない。大半はモーニングやタキシードにコートだが、和服もいる。新聞記者室では記者たちが煙草を吸う。こちらは普通のネクタイにスーツ。大臣も記者も来賓もカメラに慣れているのか、全く無視。

会場の受付も飲物のサービスもすべて芸者が担当。まず着いたら食堂でお茶を飲み、工場見学。それからテントのカルピスコーナーやビールコーナーで一服。それから式典。挨拶はすべて字幕に出るのでわかりやすい。社長、むっつり顔の片岡商工大臣、県知事の後に「新聞社代表」として出てきたのが、「報知新聞営業部長」という品のない男。そして曲芸や演芸の披露。

『故鈴木三郎助殿 肖像掲揚式』(31年、11分)は鈴木商店(現・味の素)の創業者の葉山小学校での葬式であまりおもしろくないが、『鈴木家ホームムービー』(28-29年、14分)は当時の裕福な家庭の様子がわかって興味深い。高輪での観菊会に集まる家族20名ほどの楽しそうな様子といったら。当時は海が近かった。

『ご葬儀實況 昭和六年八月廿九日』(31年、32分)は濱口雄幸元首相の葬儀を撮ったものだが、おもしろいのは服装。モーニングやタキシードが多いが、黒ばかりではなくグレーなど明るい色のスーツもいる。ほぼ全員が麦藁のカンカン帽!真っ白のドレスの女性もいる。

「ドキュメンタリー」とさえ呼ばないような、会社の宣伝映像やホームムービーや葬式の記録映像がこんなにおもしろいとは。古い映像なら、もう何でも見たい。

|

« 確定申告に挑む | トップページ | 暗澹たる読書:その(1)『新・日本の階級社会』 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/66443134

この記事へのトラックバック一覧です: 古い映像なら何でも見たい:

« 確定申告に挑む | トップページ | 暗澹たる読書:その(1)『新・日本の階級社会』 »