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2018年3月 4日 (日)

暗澹たる読書:その(2)『アメリカ 暴力の世紀』

ジョン・W・ダウ―は、『敗北を抱きしめて』という卓抜な戦後日本社会論を書いたアメリカの日本研究者だが、彼が自国について書いた本ということで興味を持った。これまた、暗澹たる気分になる本だった。

原題はViolent American Centuryで、これは「アメリカの世紀」American Centuryというよく知られた言葉を受けている。この本によれば、「アメリカの世紀」は雑誌『ライフ』でヘンリー・ルースが1941年2月に初めて使ったという。その中心には、「アメリカ国民には徳の高い使命が神から与えられている」という宗教的なものがある。

それが日本の戦後処理にも日本国憲法にも生かされ、「冷戦期と冷戦後のアメリカ愛国主義を代表する表現となった」。ここにダワーは「暴力の」という形容詞を加えた。つまり「アメリカの世紀」が、実は巨大な軍事力という暴力によって支えられているということを、この本は書く。邦題の副題に「第二次世界大戦以降の戦争とテロ」とある通り。

この本には眩暈がするほどの嫌な数字が満載だ。

「国防総省が維持する海外の軍事基地・設備の数は八〇〇にのぼり、八〇カ国に分散されている」

「二〇一五年の一年の間にアメリカ軍のエリート特殊部隊が展開されたのは約一五〇国に及び、アメリカ政府が武器と軍事訓練を提供した国の数はそれ以上に上っている。…世界の四分の三の国々に至るまでアメリカの存在が拡大されたのは、主として二一世紀の対テロ戦争の結果だった」

「1980年代に狂気の頂点に達した米ソの核保有量は、現在約三分の一まで減少した。…いまだに世界には一万五四〇〇発の核弾頭が残されており、そのうち九三パーセントが米露の保有となっている。米露両国の保有核兵器のうち二〇〇〇発近くが、ミサイルに搭載されているか、あるいは作戦準備部隊の基地に配備されていて、いつでも使える状態にある」

「第二次世界大戦以降、ほとんど毎一〇年間に世界中で二〇〇万人以上が戦闘死している」

「一九四八年から一九九〇年の間にアメリカ政府はラテンアメリカの少なくとも二四カ国の政府を確実に転覆させた」

「一二七一の数の政府組織ならびに一九三一の数にのぼる私企業が、アメリカ国内一万カ所で、テロ対策、国内安全保障ならびに諜報活動にかかわるプログラムの仕事に携わっている」

日本に問題は多いが、アメリカはそれどころじゃない。そしてそれは日本にも関わってくる。まさに暗澹たる気分の日曜日だ。

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