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2018年3月31日 (土)

「猫たち」を見る

東急文化村のザ・ミュージアムで4月18日まで開催の「猪熊弦一郎展」を見た。チラシでは「猫たち」と大きく書かれていて「猪熊弦一郎展」は本当に小さく描かれている。キャッチコピーは「猫好き画家の素敵な暮らし」。

チラシ表には、10匹ほどの猫を描いたデッサンが大きく使われている。裏面も猫を描いた油彩がいくつも並んでいる。しかしよく文章を読むと「本展は彼が愛した猫たちを描いた作品をまずは堪能していただき、猪熊弦一郎の奥深い世界に触れるきっかけとなるよう企画された展覧会」と「言い訳」のように書かれている。

私は犬も猫も興味がない。というよりも、ペット類を可愛がる気持ちがわからない。だから「猫たち」には全く惹かれなかったが、実におもしろい展覧会だった。猪熊弦一郎は1902年生まれで93年に亡くなっているから、まさに20世紀を生きている。

今回の出品作の大半は四国の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の所蔵品だが、かつてそこに行った時は、塩田千春の大きな個展(すばらしかった)をやっていて、常設の猪熊作品はあまり見られなかった記憶がある。だからこうやって一度に集めてくれるとありがたい。

まず、その人生の軌跡に圧倒される。1938年にパリに行って、40年6月14日のドイツ軍のパリ入城の日にマルセイユから船に乗って帰国。荻須高徳夫妻と一緒だったという。パリではマティスに学んだというが、2年程度の滞在だと何度か訪問した程度かもしれない。

ただその頃の絵には、明らかにマティスの影響がある。黒いはっきりした輪郭線と大胆な色使い。それは帰国後の50年代前半まで続く。驚いたのは1941年に中国に行って《長江埠の子供達》を描いていること。明らかに従軍画家としての絵だろうが、中国の子供を描いているだけで、「戦意高揚」は感じない。同じ頃にフランスから帰国した藤田嗣治のような戦争画はないのだろうか。

1955年にアメリカ経由でフランスに行こうとして、ニューヨークに留まる。結局20年もそこで暮らす。藤田はアメリカ経由で予定通りフランスに行くが、猪熊はその計画を変えたところが興味深い。その時代の絵は自由奔放で実にポップ。さすがに猫は一切出てこないが、一番おもしろい。

そして帰国すると、日本の日常を描くせいか、再び猫が出てくる。マティス風やピカソ風もあるが、もう自由自在に筆の向くままという感じ。この画家は東京国立近代美術館あたりで、きちんとした個展を見たい。


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