« 「コンビニ人間」か | トップページ | 「猫たち」を見る »

2018年3月30日 (金)

『修道士は沈黙する』の職人芸

ロベルト・アンドー監督の『修道士は沈黙する』を劇場で見た。この監督は昔イタリア映画祭をやっていた頃から何本か見たが、思わせぶりのわりには小粒のドラマを作る職人監督という印象を持っていた。ところが先日の公開前に多くの新聞が絶賛の映画評を載せていた。

チラシにもこの監督が「イタリアの奇才」と書かれていて、あれっと思った。劇場で映画を見てみると、いかにも話題を呼びそうなテーマを巧みにまとめていたが、やはり「奇才」よりも「職人」だと思った。

舞台はドイツのバルト海に面したリゾート地で、G8の財務相会議が開かれる。そこには日本を含む各国の財務大臣と国際通貨基金(IMF)の専務が集まるが、その前夜祭には修道士と絵本作家とロック歌手も招待されていた。

どことなく気まずい夕食会の後に、IMFのロシェ専務(ダニエル・オートゥイユ)は修道士(トニ・セルヴィッロ)に告解をしたいと頼み込む。翌朝、袋を被った専務の死体が発見されて、修道士が一番に疑われるが、沈黙を守る。

記者発表の月曜までの週末に、捜査は進む。同時に貧富の格差をさらに広げるような経済政策の内容が議論される。そこに挟み込まれるのが、専務が修道士に告解をする場面。

カメラは、各国の大臣たちの動きを滑らかな移動撮影でじわじわと見せてゆく。その中心に何を考えているのかさっぱりわからない修道士がいる。ほとんど女優のような絵本作家やカナダの財務大臣のエロチックな姿も味を添える。さらに死んだ専務の友人(ランベール・ウィルソン)や認知症のホテルのオーナーも加わって、ミステリアスな雰囲気が盛り上がる。

しかし結局のところ告解の内容は極めて常識的で道徳的で、大騒ぎした割には何だかなあと思った。そのうえ、ダニエル・オートゥイユもドイツの大臣役のモーリッツ・ブライプトライも本来は労働者やギャングの顔なので、私はピンと来なかった。唯一向いていそうなランベール・ウィルソンは髭だらけで現れるし。女優陣はセクシーなだけ。

豪華俳優を国際的に揃え、流れるようなカメラと音楽でスルスルと見せられたので、それなりに見ごたえはあった。G8を舞台にしたミステリーという設定がうまいし、今の日本では財務省が大きな話題ではあるし。しかしこのレベルの映画をほめ過ぎるのはどうか。新聞で絶賛した記者や評論家の名前は記憶しておく。


|

« 「コンビニ人間」か | トップページ | 「猫たち」を見る »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/66543054

この記事へのトラックバック一覧です: 『修道士は沈黙する』の職人芸:

« 「コンビニ人間」か | トップページ | 「猫たち」を見る »