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2018年3月15日 (木)

『しあわせの絵の具』のサリー・ホーキンス

『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンスがあまりに気に入ったので、思わず彼女が出ているもう1本の上映中の映画『しあわせの絵の具』を見に行った。「愛を描く人 モード・ルイス」の副題通り、カナダの女性画家の話だ。

モードの描く絵は、美術史的には素朴派=ナイーブ・アートに属するだろう。つまり、アンリ・ルソーなどのようなある種のヘタウマで、今ならアウトサイダー・アートにも近いかもしれない。

彼女は小さい頃からリウマチの障害があり、両親に先立たれた後に兄や叔母にイジメられる。魚の行商人エベレットの住み込み家政婦になり、その合間に絵を描く。エバレットは人嫌いの変人だが、時間がたつうちにモードと愛し合うようになる。

一方でモードの絵はひょんなきっかけから売れ出す。エバレットはそれが癪に障るが、モードは描き続ける。そして叔母から明かされるある秘密にモードは動揺する。

狭い一軒家の中で、必死で夫に仕え、壁や窓にまで絵を描くモードを演じるサリー・ホーキンスが抜群にいい。『シェイプ・オブ・ウォーター』では口がきけない役だったが、今度は手足が不自由。共通するのはまっすぐな心。そしてそれを見守る武骨で不器用な夫役のイーサン・ホークも何ともぴったり。

演出としては特にどうということはないが、最後まで好感を持って見た。窓の外の風景や車の中にいる2人を外から写すシーンなどに繊細さも光る。

数年前の『セラフィーヌの庭』というフランス映画を思い出した。これまたセラフィーヌという素朴派の画家の生涯をたどるもので、セラフィーヌ役のヨランド・モローが壮絶な演技を見せた。

美術史を見ると、もともと女性画家自体が多くない。だからそれを貫くと孤独で狂気に近い人生を送ることになる。今だと、精神病院に住みながら絵を描く草間彌生さんがそうだろう。

幸いにして、映画を見る限りではモードは精神的にはそれほど追い込まれていないし、人嫌いの堅物だが実は優しい夫もいた。だから『セラフィーヌの庭』に比べると、見終わって幸せな気分に浸ることができる。こんな映画もたまにはいい。


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