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2018年3月26日 (月)

『素敵なダイナマイトスキャンダル』の時代感覚

冨永昌敬監督の『素敵なダイナマイトスキャンダル』を劇場で見た。この監督は前作の『南瓜とマヨネーズ』が現代を舞台にしながらも、原作の90年代の雰囲気をうまく出していた。さてカリスマ雑誌編集者の末井昭の半生を描いたらどうなるのか。

なにせ1950年代の子供時代から、高卒後の就職、そしてさまざまな職業を経て80年代に『写真時代』を出すあたりまでを描くのだから。1975年生まれの監督の手に負えるのかと思った。

ところが映画は服装や家の中などは一応時代を再現しながらも、基本的にはそれぞれの時代にユーモアをたっぷりまぶせて自由に軽やかに描いていた。実は、最初に末井役の柄本佑が警視庁で取り調べを受けているシーンでは、ちょっと違うのではないかと思った。

ところが末井が就職をして工場やデザイン会社に勤めているうちに、だんだんおもしろくなる。父親も含めてヘンな大人は、みんな牛乳瓶の底のような曇った眼鏡をしている。キャバレーの宣伝ポスターをやるうちに、風俗店の看板描きで有名になる。

それからエロ雑誌の世界に入り、「ニューセルフ」「ウィークエンド・スーパー」から「写真時代」へ。その間、編集部の新人女性に夢中になったり、警視庁に何度も呼び出されたり。

とにかく何も考えずに頼まれたままに仕事をし、どんどん忙しくなる男を柄本佑が飄々と演じる。妻役の前田敦子のダサい感じも抜群。会社の同僚役の峯田和伸、警視庁の係長役の松重豊、父親役の村上淳、母親役の尾野真千子など、ダッチワイフ職人の嶋田久作など、出てくる脇役たちが強烈な個性を放つ。

父親役の村上淳は息子以上に何を考えているかわからないし、母役の尾野真千子は美人ながら結核が治らずヤケになって近所の男と関係を結ぶ哀しい感じがいい。この2人の暗い影が全体を覆う。時代の雰囲気というより、それぞれの俳優たちの存在感を最大限に生かしている感じか。

いわばポップな冨永流の時代の再現だが、それなりに楽しめた。1980年代のエロ雑誌のグラビアの感覚は懐かしかったし。個人的には、後に頭のおかしくなる編集部の元新人の女性(三浦透子)が妙に気になった。精神病院のシーンなど印象に残った。平日の昼間にも映画館にはかなり客がいた。

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