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2018年3月 2日 (金)

暗澹たる読書:その(1)『新・日本の階級社会』

最近、読んで暗澹たる気持ちになる本をなぜか続けて数冊読んだ。まず先週関西の仕事に行く途中に読んだのが、橋本健二著『新・日本の階級社会』。これはもう本の題名だけで内容がわかる。

筆者によれば、「格差社会」という言葉が流行語大賞のトップ10入りをしたのは2006年だが、1988年11月19日の「朝日」の「社説」で「『格差社会』でいいのか」が載ったのが、最初だと言う。この社説は、前日に発表された『国民生活白書』が公式文書として格差拡大の事実を初めて認めたことを受けたもの。

大きなトレンドとしては、1975年から80年頃が格差が一番少ない。「一億総中流」の時代である。それから格差が再び広がり、「格差拡大はもう、四〇年も続いているのである。いや、格差を縮小するためのまともな対策がとられてこなかったのだから、四〇年近くも放置されてきた、といってもいい」

今や非正規労働者は929万人で就業人口の15%。その平均収入はわずか186万円で、20~59歳の未婚率は男性で66%、女性で56%。女性の残りのほとんどは離死別者。「現代の日本社会は、もはや「格差社会」などという生ぬるい言葉で表現すべきものではない。それは明らかに、「階級社会」なのである」

筆者はここで「アンダークラス」という言葉を導入する。「労働者階級が資本主義社会の最下層の階級だったとすれば、非正規労働者は「階級以下」の存在、つまり「アンダークラス」と呼ぶのがふさわしいだろう」

ちなみにこの「階級」は「資本家階級」「新中間階級」(会社員の管理職)「旧中間階級」(自営業)「労働者階級」(単純労働)からなるが、この4階級とアンダークラスには大きな差がある。

アンダークラスは、最終学校の中退者が多い。また学卒後すぐに就職しなかった者が目立つ。ほかの階級では9割近くがすぐに就職しているが、このクラスの就職率は67%。健康状態はよくない割合が高い。心の病は、ほかが7-8%なのに、20%を超す。

そうしてこの階級構造は世襲化されつつある。各階級からアンダークラスへ落ちる確率は年々高まっているが。女性は結婚相手の階級に大きな影響を受ける。あるいは離死別が大きい。階級は男性より深刻である。アンダークラスが外国人を排斥する排外主義に陥りやすいという指摘は、何とも痛ましい。

こうした階級社会に対して、筆者はいくつかの解決策を示す。賃金格差の縮小、累進課税の強化、資産税の導入(不動産に対する固定資産税を金融資産にも導入。『21世紀の資本論』のピケティは「世界的な資本税」を提案)、生活保護の実効性の確保、ベーシック・インカム制度、相続税率の引き上げ、奨学金制度の改革など。

これは自民党政権では難しい。従って「格差社会の克服という一点で、弱者とリベラル派を結集する政治勢力の形成。格差社会の克服は、したがって日本社会の未来は、ここにかかっているのである」。ううむ、未来はないかも。

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