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2018年4月15日 (日)

『リメンバー・ミー』のメキシコ

見たいと思っていた『リメンバー・ミー』をようやく劇場で見た。そもそもアニメは見ないし、ディズニーにもピクサーにも特に興味はないが、この映画を見たいと思ったのはメキシコ文化、特に「死者の日」を描いていると聞いたから。そのうえ、公開から4週たっても週末一位を続けているのも気になった。

見終わってかなり満足感があった。何より主人公のミゲルが「死者の日」のお祭りで迷い込む「死者の国」が素晴らしい。骸骨たちの造形も楽しいが、極彩色の街の姿やそこを飛ぶ虹色のライオンや犬など、これほど「色」というものの魅力を見せる映画はめったにないのではないか。死者の国に渡る橋に敷き詰められたオレンジ色の花びらを見るだけでうっとりする。

物語もよくできている。ギターが大好きのミゲルの家では、音楽を禁じられている。なぜなら彼の祖母の祖母の夫だった男が、歌手になるために家族を捨てたからだ。家には年老いた曾祖母(つまり歌手の娘)が、半分ボケながら何とか生きている。

ミゲルは「死者の日」のお祭りで、何とか家族に隠れてギターを弾こうと大騒ぎをするうちに「死者の国」に迷い込む。そこでは「死者の日」に限って死んだ人々が、家族が写真をどこかに飾っていることを条件に、現世を訪れることができる。

ミゲルはそこで祖父の祖父と信じるエルネストと会おうとするが、その過程で家族を訪ねるために自分の写真を生者の世界に飾って欲しいというヘクターと出会う。彼は、自分が家族から忘れられると自らの存在が消えてしまうと言う。

日の出までに父に会って帰らないと死んでしまうミゲルと、生者が自分を思い出さないと存在が消されるヘクター。ヘクターの思いが「リメンバー・ミー」=「私を覚えていて」という歌につながる。実はこの2人の関係は……というのが終盤のクライマックスだが、最期に曾祖母が父の写真を飾るシーンでは泣いてしまった。

会話や歌にはところどころスペイン語が交えられているが、基本はすべて英語。「死者の日」や「死者の国」などアメリカ人にとっては異国のメキシコ文化が描かれているが、すべて理想の美化した風景になっている。

監督のリー・アンクリッチを始めとしてスタッフはアメリカ人。つまりはアフリカ系が中心になって作った『ブラックパンサー』以上に、ハリウッドが異国の文化を美化して多文化社会を取り込む世界戦略とする形は明らか。それでも抜群におもしろいので、吹き替え版でもう一度見たい気にさえなった。

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