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2018年4月18日 (水)

『男と女、モントーク岬で』のシュレンドルフ

5月26日公開のフォルカー・シュレンドルフ監督『男と女、モントーク岬で』を見た。この監督は、大学に入ったばかりの頃に『ブリキの太鼓』(79)が公開されてずいぶん話題になった。

その後はハリウッドに行っていま一つだったが、今世紀に入ってドイツで低予算の映画を作り始めてからまた注目されてきた。『9日間~ヒトラーに捧げる祈り』(04)は2005年のドイツ映画祭で上映後DVDが出たし、『シャトーブリアンからの手紙』(11)や『パリよ、永遠に』(14)も公開された。

今回の『男と女、モントーク岬で』を見始めてすぐに思ったのは、主人公のマックスを演じるステラン・スカルスガルドのたたずまいが、2005年にベルリンで会った時のシュレンドルフにそっくりだったこと。そこには、功成り名遂げた芸術家の余裕というか、静かな笑顔があった。

私がシュレンドルフ監督に会った時、ブランデンブルグ門のそばのパリ広場に面した豪華な劇場でレクチャーの準備中だった。私を控室に招き入れると、そこのソファのテーブルにはフランスの高級白ワインがあって、「飲みながら話そう」と始まった。横には美人秘書が控えていた。

この映画もスカルスガルド演じる著名な小説家のマックスがベルリンからニューヨークに着いて、新作のキャンペーンを始めるところから始まる。白髪で場違いなくらい気楽な服装だが、小説家なら許される、そんな感じ。横には優秀な広報担当者がいて、日程を確認している。

マックスはニューヨークに住む若い妻クララと仲がいいが、旧友のウォルター(ニエル・アレストリュプで時々仏語を話す)と偶然に会ったことから、昔つきあったレベッカの連絡先を聞き出す。

マックスは何とかしてレベッカに会うが、彼女は冷たい。しかし翌日に電話がかかってきて、土曜日に思い出の地、モントーク岬に行くことに。

よくある中年の「焼けぼっくいに火がつく」話だが、これがじわりじわりと来る。モントーク岬でマックスは何とも言えないように笑う。微笑、苦笑、後悔、喜びのすべてが混じったような。そしてレベッカがワーグナー(たぶん)をかけた時には、じーんと来た。

『9日目』や『パリよ、永遠に』のよくできた脚本に比べると、話は甘すぎるかもしれない。最近の作品で扱っている第二次世界大戦の話ではなく、今の自分の個人的な独白のよう。まあそれでもいいや、と思わず思ってしまうような、濃厚な雰囲気が流れている。

シューレンドルフ監督は、かつて同じ監督のマルガレーテ・フォン・トロッタと20年ほど結婚していたはず。見ていて何だか監督本人がマックスに乗り移ったような感じがした。

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