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2018年4月29日 (日)

日本人は「働き方改革」ができるか

先日、「毎日」に載った城みちるのことを書いたが、同じページに残間里江子氏のコラムがあったので、読んでみた。もともとこの人は苦手だったが、「もう一度花を咲かせよう」という連載のタイトルを見て、嫌な感じがした。

そこに書かれているのは、彼女を含む映像、音楽、広告に関わった平均69歳の男女4人が集まって、「働き方改革」に疑問を呈したという話。「昨年までは『みんな帰っても僕は仕事をしたい』という仕事をしていた若者も多かったけど、……作業を時間で区切って早々と帰るクリエーターが増えている」ことを嘆く。

「このままでは日本のクリエイティビティ―は劣化する」というのが結論のようだ。さてこの議論は「改めて、1960年代の日本映画を見たら素晴らしくて」という発言から始まる。そして内田吐夢監督の『飢餓海峡』が例に挙げられる。まずこの前提に問題がある。

1965年に作られた『飢餓海峡』はもちろん傑作だが、戦前から活躍して満州に移り、残留の後に帰国して復活した内田吐夢監督の怨念のこもったような演出によるものだ。そして、それに応えた三國連太郎以下の俳優陣と東映東京撮影所の力がある。

残間氏のようないわゆる団塊世代が活躍したのは1970年代以降。彼女が有名になったのは山口百恵の『蒼い時』を出した1980年から。少なくとも1960年代の映画とは何の関係もない。

だから『飢餓海峡』をまるで自分たちが作ったかのように自慢して、働かないクリエーターが増えた今後の日本はダメになるというのは、そもそもズレている。ただ、それは置いておこう。

マスコミに限らず、どの業界もかつては徹夜で働いた人がいた。私も30代後半まではそれに近かった。たぶんそういう人は今もいるし、今後も出る。今は彼らが会社員ではない場合が多い、ということではないか。残間氏の時代は、クリエーターも会社員が多かったから、ある意味では楽だったはず。

「働き方改革」のポイントは、普通の会社員が上司の顔色をうかがって遅くまで残ることをやめよう、という単純な話。もう一つは夏休みなどをもっと長く取ろうということ。先進国で一番休みを取らないのが日本人だが、それを続けても今では経済は停滞している。むしろ先進国並みに休暇を取った方が、旅行やレジャーなどの産業にはいいだろう。

自分が会社員から降りたせいか、「かつて私は猛烈に働いた」を自慢するオヤジやオバサンがうっとうしい。

付記:内田吐夢をうろ覚えで「シベリア抑留」と書いたら、コメントが来たので少し直しました(4/30)。

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コメント

ご趣旨、おっしゃるとおり。小生も「働き方改革」に賛同しませんが、恩恵は受けています。
一点、ご確認。内田吐夢は「シベリア抑留」はされていないと思います。満州映画協会で敗戦を迎え、中国共産党の指導のもとで、中国に残留。満映の中国残留組の指導的立場として、満映を引き継いだ東北映画公司の基礎を築いたというのが、映画史的事実ではないでしょうか?

投稿: 古賀重樹 | 2018年4月29日 (日) 22時51分

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