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2018年4月13日 (金)

「ニッポン・ノワール」を見る:続き

ロマンポルノ以前の西村昭五郎監督作品では『競輪上人行状記』(1963)が抜群におもしろかったのはここに書いたが、その特集で見損なった『花を喰う蟲』(67)を「ニッポン・ノワール」で見た。これももなかなか興味深い。時代的にはロマンポルノ直前のせいか、エロチック路線も楽しめた。

話としては、二谷英明演じる香本が、横浜の不良少女・奈美(大地喜和子)をモデルに仕立て上げて、ある目的のために金持ちに抱かせる、というもの。そこに60年代末にふさわしい、支離滅裂な展開の中でわけのわからない感情がいくつも生まれる。明暗のくっきりしたスタイリッシュなカメラ(安藤庄平)もピッタリ。

まず、奈美は紳士然とした香本を好きになり、言われるままに行動してモデルとして有名になるが、ある時彼のヨットで不動産屋の社長・佐伯を抱かせられて嫌いになる。ところがそうすると仕事が来なくなる。諦めて再び香本に近づく。終盤ではお互いに「あなたのような男になりたい」「君のような女になりたい」と言いあうのだから笑ってしまう。

そのうえ奈美は、香本が資産家五井の息子に近づかせると本気で好きになって結婚まで考える。その一方でその息子の婚約者で政治家・斎村の娘妙子(梶芽衣子)と仲良くなり、2人はレズになってしまう。そもそも奈美には陸という恋人がいて、彼は終盤に嫉妬で香本を殺しさえもするのだが。

もともと香本が奈美を使って五井や斎村を陥れようとするのは、かつての妻で今や五井の内妻となった絹子(月丘千秋)のためだった。彼は自分のヨットでの斎村と奈美の情事や五井が佐伯を殺す場面を8ミリフィルムで撮影しているのだから、何とも倒錯的だ。最後は一人になった奈美が大金を持って海外に行く。

奈美は水着や下着で最初から肌を露出させる。背中や尻や足を何度も見せ、確か2度、乳首も出ていたと思う。彼女のコケティッシュな魅力がこの映画のウリだったのだろう。彼女を演じる太地喜和子は、私にとっては80年代の「恋多き豊満な熟女」という印象だったが、骨が浮き出るほど痩せたノリノリのバカ娘役が出世作とは知らなかった。

奈美と香本が寝るホテルは横浜の「ホテル・ニューグランド」、羽田に着く飛行機は「ノースウエスト航空」、奈美と香本がサングラスで佇むのは旧「国立競技場」、整形手術をするのが新橋の「十仁病院」など、時代を表す固有名詞も懐かしい。

この映画は鈴木清順監督『殺しの烙印』と2本立てで記録的な不入りとなり、清順がクビになるきっかけを作ったという。少なくともこちらは「普通に」おもしろいと思うのだが。

そう言えば、冒頭で香本がオシャレをして宝石をつけた奈美に「買ったばかりのものをすぐ着るのは、生まれがいやしい証拠だ」と言うが、私もそうなので、ちょっとおかしかった。そんなこんなでいろいろなことを考えた。

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