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2018年5月25日 (金)

『30年後の同窓会』の心地よさ

6月8日公開のリチャード・リンクレーター監督『30年後の同窓会』を見た。中身はタイトル通りで、ベトナム戦争で一緒だった3人が30年ぶりに再会して、語り合うというもの。いわゆる「同窓会」ではないが、そんな感じで見ていてとにかく心地よい。

出だしから自然に乗せられる。2003年12月という文字が出た後に、田舎の寂れたバーに中年男が入って、ビールを頼む。店主と二言三言話した後に、「僕を忘れたかな」と言い始め、店主はようやく「ドク」だと気づく。それからは大騒ぎで飲み明かす。

翌朝、店主のサルはドクの頼みで車に乗って一緒にある教会へ行く。そこでは同じくベトナム戦争で戦ったミューラーが神父をやっていた。ミューラーの家で食事をするうちに、ドクは最近妻を亡くし、イラク戦争に行った息子が死んだ知らせを2日前に受けたことを告白する。

彼が昔の仲間を集めたのは、アーリントン墓地に埋葬されるので一緒に行ってくれないかというものだった。そこまでで10分ほどで、それからは3人が車に乗って旅をする話となる。ようやくドクは遺体と対面するが、彼は予想外の行動に出るため、旅は続く。

途中から大きなトラックに乗ったり、列車に乗ったりのロード・ムービーだが、その間3人はひたすら話す。ベトナムの小さなエピソードを思い出したり、今の生活の不満を語ったり。回想シーンなしで話すのみ。テレビではフセイン逮捕の報道が流れている。

3人の話につい引き込まれるし、語る表情や雰囲気がいい。そこには『6才のボクが、大人になるまで』(2014)で見せた、「時間の経過」が生み出す悲劇と喜劇をそっと見せる巧みな演出がある。そしてドクの息子の死の真相がわかってくる。

アメリカにとって大きな傷となったベトナムとアフガン、イラクという2つの戦争を実際には見せずに、3人の話で物語る。何も起こらない、単なるオヤジ同士の話なのに、アメリカの歴史が浮かび上がる。全体に暗めの色調の画面の奥に、戦争というものの本質が見える。

このオヤジたちは、年齢的には私の世代。私たちの30年前だと80年代後半のバブル期になるが、旧友と集まってそれを思い出しても、全く映画にならないだろう。


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