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2018年5月 7日 (月)

『犬ヶ島』の抜群の楽しさ

ウェス・アンダーソン監督は、これまでも『ムーンライズ・キングダム』(12)や『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)などの凝りに凝った設定や美術で楽しませてきた。ところが5月25日公開の人形アニメ『犬ヶ島』は、それを上回るような驚異のおもちゃ箱だ。

まず最初に、映画に出てくるすべての表記や文字に日本語が使われているのに驚く。日本を舞台にしているのだから当然と言えば当然だが、ここまで徹底しているのは初めて。最後のクレジットにいたるまで欧文とカタカナの併記。

舞台は20年後の日本。メガ崎市ではドッグ病が流行し、小林市長はすべての犬を犬ヶ島に追放する。そこはいわゆるゴミ島で、5匹の大きな犬が人間への反乱を企てていた。そこにやってきたのが、市長の養子で自分の犬を探しにきた小林アタル。

アタルは犬たちと仲良くなり、アタルを探しに来た捕獲隊を犬と共に撃退する。メガ崎市では、小林市長を批判してドッグ病の治療薬を開発していた渡辺教授が殺される。高校生や留学生は陰謀を感じ、市にやってきたアタルや犬たちと組んで反撃を開始する。

メガ崎市での会話は基本的に日本語で、途中から英語の通訳の声が大きくなって字幕が入る。犬の会話だけが英語。20年後というが、実際は1960年代の日本風。冒頭から浮世絵が出てきたり、ラーメン屋(メガ盛り40円!)や古い町並みがあったり、和太鼓を叩いたり。

小林市長の表情は三船敏郎そっくりだし、『酔いどれ天使』や『七人の侍』の音楽も流れていたと思う。日本および日本映画への徹底したリスペクトが感じられる。

かつての江東区の夢の島を思わせるようなゴミ島は実にリアル。犬たちは運ばれてくるゴミを漁るしか生きる道はない。まるで、社会から排除された人々のように。犬も人間も人形なのだが、最近の目ばかり大きな顔のアニメに慣れているので、違和感がたっぷり。

とにかく1つ1つのカットが愛おしいほど細かく作られている。渡辺教授を鮨のワサビに毒薬を交えて殺そうとするシーンなどはその細かさに目をむく。

最後は普通のハッピーエンド。だけど見終わると多くのシーンを見過ごした気がして、また見たくなった。今度は公開後に映画館で吹き替え版を見たい。

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