『タクシー運転手』の夢を見た
久しぶりに、見たばかりの映画の夢を見た。韓国映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』を劇場で見た日の夜のこと。この映画を見たいと思ったのは、光州事件を描いていると聞いたから。韓国で1200万人以上を動員したというのも気になった。
1980年5月の光州事件を舞台に、事件を映像に収めようとするドイツ人ジャーナリスト(トーマス・クレッチマン)と彼が乗るタクシーの運転手(ソン・ガンホ)の友情を描く。監督のチャン・フンは、『高地戦』(2011)が記憶に残っている。
いかにも庶民風で気のいい運転手が、お金のために光州に行って事件に遭遇して次第に変わってゆく。出ずっぱりで演じるのが、名優ソン・ガンホ。ドイツ人や韓国人ジャーナリストたちの強い意志と光州の庶民やタクシー運転手たちの友情、そして何より無防備な庶民に銃を向ける軍隊を見て、何とか役に立ちたいと思う。
まず、光州事件の雰囲気がよく再現されていると思う。店のシャッターが閉ざされ、道路にはビラや紙屑が舞い、あちこちに負傷した人々が倒れている。大きな広場では軍隊が発砲して、集まる人々を蹴散らす。私服の刑事たちはドイツ人ジャーナリストを追いかける。
そして最後は、ソウルの空港をめざすドイツ人を載せたタクシーを軍隊が追いかける派手なカーチェイス。光州のタクシー運転手たちも身の危険を顧みずに手伝って軍を邪魔する。スローモーションを多用していささかやり過ぎではないかと思うが、それでも涙が止まらない。
結婚したがお金がなくてサウジで稼ぎ、帰国して病気の妻の勧めでタクシー運転手になったという主人公が、1980年の韓国そのものを見せる。絶えず亡くなった妻との間の娘を心配する。タクシーには妻と娘と一緒の写真。
光州事件が起きた時、私は大学1年生で病床にいた。日本にもある程度のニュースは伝わったはずだが、全く記憶にない。この事件のことを知ったのはずいぶん後だ。そんな後ろめたさが、夢になって現れたのかもしれない。
冒頭で東京のシーンが出る。外国人記者クラブで、ドイツ人は東京に8年もいて「快適すぎる」と言った。彼が最後にニュースを送るのも東京経由だ。そもそも韓国の軍政は、アメリカや日本に大きな関係がある。そんな思いも夢につながったのかもしれない。夢の中で、私はデモ隊の中で軍隊に追われて走っていた。
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