「平成」を表す映画とは
昨日の「日経」夕刊社会面トップの「平成あと1年 実感じわり」という記事に、私のコメントが載った。昨年末に学生が企画した映画祭「映画と天皇」を振り返った話で、学生の言葉も交えてあった。実はこの取材の時に「ところで先生は、平成を表す映画はどれだと思いますか?」と来た。
大学の教師は、時々いきなり知らない記者やテレビ局から電話がかかってきて、質問をされることがある。美術ならば「19世紀後半のフランス美術」などそれぞれの専門に応じて聞かれるが、映画は歴史も短いせいかすべて知っていると思われているフシがある。
最初は、「平成を表す映画」という質問にポカンとなった。困って本棚を見たら、『キネマ旬報ベストテン90回全史 1924-2016』という便利な本があった。それを取り出して、平成元年=1989年を開いた。すると5位に『魔女の宅急便』、8位に『その男、凶暴につき』があった。
「平成元年に宮崎駿の最初の大ヒット作と北野武のデビュー作がありますね。この2人は90年代以降の国際映画祭の日本の顔になりますね。考えてみたら、平成の時代はこれに河瀨直美、三池崇史、黒沢清、是枝裕和、園子温など海外に出る日本映画が一挙に増えた時代ですねえ」と思いつきを語った。
「特に是枝裕和監督の映画は、描く対象が『幻の光』(95)から大半は家族です。全くドラマチックでないホームドラマというのが、平成流なのではないでしょうか」「『Always 3丁目の夕日』(05)は大ヒットしましたが、これは平成の我々がすべて前向き、上向きの昭和を懐かしんで楽しむものですね」「『フラガール』(06)にもそういうところがあります」
「『おくりびと』(08)は、まさに平成の映画ではないですか。東京の一流のオーケストラの団員から、地方に行って何と葬儀屋で勤め始めて人生の意味を見出す話ですから。平成は日本が明治以降初めて下り坂を降り始めた時代です。下る人生も悪くないとわかるのが、平成ではないでしょうか」
もちろんこうした与太話は、新聞には使われなかった。でも、『Always3丁目の夕日』と『おくりびと』と是枝作品は、平成らしい映画ではないだろうか。
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