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2018年6月 4日 (月)

「安くておいしい国」日本

先日の「朝日」論壇時評で、小熊英二氏が「「安くておいしい国」の限界」という見出しで書いていて、はたと膝を打った。最近私がぼんやりと考えていたことと、同じだから。

「16年のランキングだと、日本は国際観光客到着数で世界16位。ただし増加率が高く、12年から17年に3倍以上になった。今や観光は日本第5位の産業」「なぜこれほど増えたのか。…私が世界各地を訪れた経験からいうと、別の理由がある。観光客から見れば、日本は「安くておいしい国」になったのだ」

これは私の経験とも一致している。2年前にパリで半年暮らしたが、肉や魚や野菜は日本の1.5倍くらい。レストランやクリーニングなどサービスのかかるものは、2倍。1週間行ったニューヨークでは外食がほとんどだったが、日本の3~4倍くらい。

「欧米の都市だとサンドイッチとコーヒーで約千円は珍しくない。…だが東京では、その3分の1で牛丼が食べられる。それでも味はおいしく、店はきれいでサービスはよい。ホテルなども同様だ」

「このことは、日本の1人あたりGDPが95年の世界3位から17年の25位まで落ちたことと関連している。「安くておいしい店」は千客万来で忙しいだろうが、利益や賃金は上がらない。観光客や消費者には天国かもしれないが、労働者にとっては地獄だろう」。結局、日本は観光客も留学生も増えたが、賃金は減る一方。そのうえ、最底辺には違法滞在の外国人たちがいる。

「私は、もう「安くておいしい日本」はやめるべきだと思う。客数ばかり増やすより、良いサービスに適正価格をつけた方が、観光業はもっと成長できる。牛丼も千円で売り、最低賃金は時給1500円にすべきだ」

私もこの意見に賛成だが、たぶん企業はやらないだろう。自治体が最低時給を1500円にしたら、企業から猛烈な抗議が来るだろうし。こうなると企業トップの倫理観や世界観にかかっている。

小熊の文章はこう締めくくる。「日本の人々は、良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、そのストレスを、安くて良いサービスを消費することで晴らしてきた。そんな生き方は、もう世界から取り残されている」

確かにそうだが、ユニクロやコンビニが変わるとは思えない。小熊氏もそうだと思うが、50代後半で金に困っていない私自身は物価が高くなってもいい。だけど現状ではそれを望まない人が大多数だろう。もちろん給料が上がれば物価があがってもいいのだが、という具合に堂々巡りになる。

せめて個人的にはあまり安物買いをしないようにしようと思うが、安くていい物を買って喜ぶ習慣が、あまりに身についていて、とても抜け出せそうにない。

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コメント

弊社の記事ながら、私も激しく同感しました。純粋な消費者なんていないのに、と、ずうっと思っていました。私たちは目先のお得感に踊らされることなく、消費者の時は生産者の目線を、生産者の時は消費者の目線を忘れないようにしたいものです。

投稿: 石飛徳樹 | 2018年6月 4日 (月) 09時22分

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